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第三章 汚染の非生態学的影響海洋環境の汚染から生じる経済的・社会的および政治的な諸問題
海の汚染130 / 169
文庫クセジュ770  ジェラール・ベラン / ジャン=マリー・ペレス / 高田 治彦
自然科学
第三章 汚染の非生態学的影響
海洋環境の汚染から生じる経済的・社会的および政治的な諸問題
 前章までに、海洋環境に対する汚染の有害な効果を、局所的に、あるいは全体的にとらえつつ、明らかにしてきた。しかしながら、汚染が人間に対して及ぼす多くの影響について、たとえば健康や、産業や、食糧資源や、レジャーや、あるいはただ単に快適さといったものへの影響にまで拡張して、データの解析を行ったことは、例外的な場合を除いてはなかったのである。
 これまでは直接的な影響しか考えなかったので、汚染の費用、すなわち追加の支出や、もうけ損なった利益については考慮が払われなかった。そのほかに「隠れた費用」と呼ばれるものがあるが、これは住みやすく、かつ利益の多い環境を再建するためには不可欠の、すべての財政的な努力をとくに指すものである。
 陸地の汚染の場合(陸地水の汚染も含めて)には、汚染に起因する直接・間接の支出や財政的な損失の程度を評価する試みが行われて、比較的良い近似値が得られている。ところが海洋環境に対しては様子がまったく違っていて、汚染の効果を減らすのに役立ちそうな諸方策について、その利益=費用のバランスシートを確立するにはほど遠い有様である。
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