30年以上続いた『笑っていいとも!』(フジテレビ)が、2014年3月で終わるとあって、テレビ業界が色めき立っている。たしかにここ数年は視聴率が低迷していたが、製作現場や出演者にも知らされていなかった。今回、タモリがみずから、しかも淡々と終焉を宣言したのは、タモリという芸人を好んで見てきた世代には、じつに「らしかった」といえるだろう。
お笑い界でビッグ3と呼ばれるほかのふたり、ビートたけし、明石家さんまと比べると、これまでタモリという存在は語られることが少なかった。雰囲気を変えたのは、樋口毅宏(たけひろ)氏の著書『タモリ論』(新潮新書) である。2013年7月の出版とともにベストセラーとなり、芸人の間で評判は上々だが、ことネット界隈で「批判」の声も多い。これがどうも、「タモリには語るべきことがもっとたくさんあるのに、必要十分なものではない」といった批判なのだ。ひるがえって、「才人」たけし、「お笑い怪獣」さんまのように、「お昼の顔」タモリのすごさを語りたいという無自覚の「欲」に、お笑いファンは気付かされたのである。
ところが、各方面で「タモリ論」が噴出し、さらにこれからが花盛りになるかというときに、タモリは『いいとも』を降りる。まるで「まあ落ち着け」と、自分が語られることをやんわりと拒否するかのようだ。タモリ独特の「いなす」間は、まだまだ衰えるところを知らないのである。