2013年、どこかで見たことのあるような航空機が、ジェットエンジンを積んだ有人飛行テストを行なった。パイロットは、メディアアーティストの八谷和彦(はちや・かずひこ)氏。ピンクのクマでブレイクしたメールソフト「ポストペット」の開発などを手がけた著名人だ。八谷氏が2003年から取り組んでいた構想、それは映画『風の谷のナウシカ』に登場する飛行装置「メーヴェ」を、実際に作ってしまおうというものだった。テストは無事に成功し、夢はまさに飛翔しつつある。
このプロジェクトの名前は「OpenSky(オープンスカイ)」。公式ホームページによれば、最終的な目標は「体重50kg程度の女の子が、ひとり乗れる仕様でパーソナルジェットグライダーを作ること」である。「体重50kgの女の子」のさすところは、まぎれもなく「ナウシカ」だろう。「メーヴェ」は、映画の劇中で風の谷を滑空する、ナウシカの颯爽としたイメージを象徴する存在。しかし、あくまで「機体コンセプト」を参考にして実現性の範囲内で開発しているため、「そのまま」再現することが目的ではない。また、スタジオジブリの公認を得ているわけではなく、事故があった場合の責任を考えて、むやみに「メーヴェ」の名前は使われていない。真摯な夢追いはまだまだ続く。