『週刊現代』(3/15号、以下『現代』)は活躍している20代女優の中から演技派女優10人を選んでいる。

 まず、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲得し、一躍時の人となった黒木華(くろき・はる、23歳)をあげる。彼女は日本の歴代受賞者では最年少だ。

 普段女優オーラゼロなのに、どんな役を与えられても、その人物に“同化”してしまうところがすごいという。その才能が開花したのが受賞作となった『小さいおうち』(山田洋次監督)だった。

 やりたい役なら殺人犯でも、着ぐるみでもいい。作品が良くなるならば脱いでもいいと公言する彼女に、出演依頼が殺到しているという。

 園子温(その・しおん)監督の映画『愛のむきだし』でレズビアン役を熱演した満島ひかり(28歳)も注目。

 「満島が下着姿で静かに股間をこすりながら、目を閉じて『ハァー』と吐息を漏らす迫真のオナニーシーンは、女優魂を存分に感じさせるものだった」(『現代』)

 最近公開された『愛の渦』の乱交シーンで観客の度肝を抜いた門脇麦(かどわき・むぎ、21歳)は、この映画のオーディションで、監督の前で躊躇なく裸を見せたという。

 映画評論家の秋本鉄次氏はこう話している。

 「女優たちはここ20年ほど、CM契約が欲しいあまりに『脱がない症候群』に陥っていた。でも最近の20代には、『女優ならチャレンジするのは当たり前』という意識が出てきました」

 この10人には入っていないが、NHKドラマ『ガラスの家』で主演の井川遥の恋敵役を演じた梅舟惟永(うめふね・ありえい、26歳)。小劇場の舞台『さらば箱舟』でヌードを初披露し、しかもクライマックスシーン15分間全裸で芝居していた。

 吉高由里子(25歳)は『蛇にピアス』のオーディションで、濡れ場は平気かと問われると「こんな体でいいですか」と服を脱いだというから度胸は満点のようだ。

 自分のペースを一向に崩さないという点では、綾瀬はるか(28歳)が飛び抜けている。年末のNHK『紅白歌合戦』の司会の後、開放感からか美容院で2時間いびきをかいて爆睡したという。

 モデル出身の女優が台頭してきたのも現代的な特徴といえるようだ。NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』を大成功に導いた(あん、27歳)や、映画『ノルウェイの森』の演技で目覚めた水原希子(みずはら・きこ、23歳)はその典型だ。

 制作会社のプロデューサーによると、杏は渡辺謙を父に持つだけあって素質は十分だし、頭の回転が速いので演出の飲み込みもいいという。

 水原も、モデル体型を生かした躍動感あふれる演技を磨くよう徹底的に演技レッスンを受けたそうで、エロカワイイ振る舞いが女性の支持を集めるようになった。

 来年の大河ドラマ『花燃ゆ』の主演を務める井上真央(27歳)は、少し見渡せば近くにいそうだし、声をかければ話をしてくれそう、そんな雰囲気を醸し出しているところがいいというのだ。

 「テレビドラマの場合は、女性に好感や共感を持たれることが大成の条件ですし、映画なら観客のメインである50代以上の中高年に支持される必要がある。彼らには、井上真央のようなタイプが受けるのです」(芸能関係者)

 映画評論家の阿部嘉昭(かしょう)氏が注目する女優は多部未華子(たべ・みかこ、25歳)だ。

 「『顔がいい』から『良い素材』という考え方も通用しません。むしろ、作品によって全く違う役柄ができるかとか、周囲との調和がとれる演技ができるかが重視されます。
 顔だけではなく全身や体の動きを見られる時代にあって、周囲と調和がとれる『アンサンブル能力』の高い女優が、いちばん上手な演技をするんです」

 そうした能力が高いのは宮﨑あおい(28歳)だそうだ。

 「役に取り憑かれる女優で、映画『北のカナリアたち』のロケが礼文島で行われたとき、宮崎の姿勢や礼儀正しさを見て、あの吉永小百合さんが『私も見習わないと』と感心したほどです」(映画プロデューサー)

 私が知っている女優は綾瀬と杏、宮﨑ぐらいである。なかでも綾瀬は贔屓で、天然ぼけのかわいさが魅力だが、彼女が演技派とは私には思えないのだが。若い女優たちは裸になるのに抵抗がないようだが、それだけなら場末のストリッパーと変わらない。若松孝二監督の『キャタピラー』で寺島しのぶが見せた迫真の演技こそ、女優が裸になるということだと思う。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 今週は『週刊文春』の「清原和博緊急入院 薬物でボロボロ」スクープが話題だが、少し角度を変えてメディア批判記事を選んでみた。

第1位 「日本の大新聞が喧伝する『アベノファンタジー』の大嘘」(『週刊ポスト』3/21号)

第2位 「NHK籾井会長『総理批判はやめてくれ』民法テレビ局に“圧力”の過去」(『週刊文春』3/13号)

第3位 「佐村河内守を絶賛した“マスコミ共犯者”リスト」(『週刊文春』3/13号)


 第3位。最初は「現代のベートーベン」ともて囃された人物が、自分で作曲もできないし全聾ではなかったことが大きな話題になったが、メディアにも責任はないのかという『文春』の記事。
 彼を人気者にしたNHKスペシャルを含めてNHKは彼について9番組を放送している。新聞は朝日新聞が32本、読売新聞は25本、毎日新聞が約20本だそうだ。そのうち読売と毎日は謝罪していないという。週刊誌が少し間違えると批判するくせに、それでいいのか?

 第2位。NHKの籾井(もみい)会長は「モミジョンイル」といわれているようだが、彼がまだ「日本ユニシス」社長だった2009年のときにも、民放テレビ局に「総理批判はやめてくれ」と圧力をかけたことがあると『文春』が報じている。
 番組はBS-TBSの『政策討論 われらの時代』。司会を務めていた毎日新聞特別編集委員の岸井成格(しげただ)氏がこう語る。

 「当時は麻生太郎政権で、総理の失言や漢字の読み間違いなどが色々と問題になった時期」
 ある日、この番組を一社提供していた日本ユニシスの籾井氏が収録現場に顔を見せて、岸井氏に「麻生批判はやめてくれませんかねえ」といったのだ。

 籾井氏の出身地は福岡県山田市(現、嘉麻市)で麻生氏のお膝元である。
 この御仁、権力に弱いところは変わりようがないようだ。

 第1位。さて、いま安倍政権批判をさせたら『ポスト』ほど鋭いメディアはないだろう。アベノミクスはほぼ崩壊しかけているのに、それを助け大本営発表を垂れ流している大新聞を批判する。
 『ポスト』によれば、3月3日付の新聞各紙の夕刊は「設備投資4.0%増」と報じた。
 読売の記事には「財務省が3日発表した2013年10~12月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は、前年同期比4.0%増の9兆4393億円」とあった。
 これを読んだ読者は「景気が上向いている」と思い込むはずである。しかし、この数字にはカラクリがあると『ポスト』はいう。
 第一生命経済研究所経済調査部の首席エコノミスト・熊野英生(ひでお)氏はこう指摘する。

 「実は前年比ではなく前期比で見ると、設備投資は2四半期連続で減少しています。つまり、設備投資は昨年同時期と比べると増えているが、この半年間で見れば減ってきている。ではなぜ昨年比だと伸びているかというと、比較対象となる12年には復興需要やエコカー補助金などの効果で4~6月期が大きく伸びていて、その後は下がっていた。前年より下がった12年後半の数字と比べているから、上がっているだけ。これは前年比の“マジック”なのです」

 新聞に限らずほとんどのメディアが批判にさらされている。メディアの原点を忘れ、権力におもねり金儲けに走るのでは存在理由が問われても当然であろう。

   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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