「米国第一」を掲げる米国・トランプ大統領が強気の策に打って出た。

 トランプ大統領は2017年8月12日、中国との貿易に対し、不公正な規制や慣行がないか調査を開始するよう、政府の関係部局に指示した。米・通商法301条に基づく措置という。

 米・通商法301条は不公正な貿易慣行を持ち、米国企業に不利益があると米政府が判断した国に対し「関税の引き上げ」「輸入制限」などの制裁措置を、一方的に発動できると定めている。米国は発動の前に、実態調査、貿易相手国との協議を行なう。その過程で制裁をちらつかせて圧力をかけ、規制や慣行の是正措置を引き出す。かつて日本も自動車や農産物、フィルムなどの分野で市場開放を迫られた経緯がある。

 今回の標的は中国。トランプ氏は「外国によって知的財産が盗まれ、米国は毎年、何百万もの雇用を失っている」と中国をけん制している。中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟し、その際、「知的財産保護」の強化を約束した。トランプ氏には「知的財産を保護するという約束にも関わらず、中国では海賊版や模倣品が横行。さらには、パソコンやデータ端末への不正アクセスで米企業や米政府の知的財産を盗んでいる」との不信があるようだ。

 これに対し、中国側は「中国は座視することはありえない」と反発、米国による貿易制裁が実行されれば、報復措置をとる構えだ。

 米中両国の貿易摩擦が本格化すると世界経済に大きな影を落とすのは必至だ。

 米国のこうした姿勢は、日本に対しても向けられる可能性がある。米国との通商協議「日米経済対話」などで、トランプ政権が攻勢を強めそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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