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日本大百科全書(ニッポニカ)

株式投資信託

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株式投資信託
かぶしきとうししんたく
stock investment trust

日本における投資信託分類で公社債投資信託と対比される区分形態。株式投信や株投とも略称される。公社債投資信託が株式をいっさい組み入れないのに対して、株式投資信託は運用上の自由度が高く、株式以外に公社債を組み入れることも可能である。たとえば、株式市場に先安(さきやす)(将来の相場が下落見込みであること)が予想される場合に、100%公社債(つまり株式組入れ0%)で運用するような極端なポートフォリオ構成(運用資産全体の構成割合)で臨むことも許される。

 日本の投資信託の歴史をひもとくと、1937年(昭和12)の「藤本有価証券投資組合」を嚆矢(こうし)とする。第二次世界大戦後の1951年(昭和26)に証券投資信託法(現在の「投資信託及び投資法人に関する法律」。略称「投資信託法」)の公布・施行に伴い投資信託商品が誕生したが、これらの商品形態はすべて株式投資信託であった。投資信託の重要な機能に分散投資によるリスク制御があるが、代表的な証券種類のなかでもっともリスクが高いとされる株式について、揺籃(ようらん)期の投資信託が主たる運用対象としたことは合理的な流れであった。それは、戦後経済復興から高度成長期にかけて各経済主体の資本蓄積が乏しい環境下にあって、株式投資信託が家計部門には株式投資の機会を提供し、発行企業には発行株式消化の受け皿として機能したからである。株式投資信託はその後も順調な拡大基調を示し、バブル経済崩壊後の株価下落を映じて純資産額の長期減少傾向を記すなど、株式相場の影響により不振な時期は認められるものの、投資信託の中心的な商品であり続けている。

 株式投資信託には広範な運用対象が認められていることから、商品設計に際しての弾力性が高く、さまざまなスタイルの商品が提供されている。たとえば、リターン獲得への運用姿勢の相違でみると、積極的に市場平均を超過するリターンを追求する「アクティブ型」、市場平均並みのリターンを目ざす「パッシブ型(インデックス型)」などに分類される。また、地域という視点からは「国内株式型」や「国際株式型」、さらにはデリバティブ(金融派生商品)を積極的に活用した「ブル・ベア型」などのハイリスク・ハイリターンの運用スタイルもある。1998年(平成10)の投資信託法改正を受けて商品構成の多様化が一段と進んだことから、毎月分配型投資信託のように、内外の公社債を投資対象としながらも、分類上は株式投資信託に属することで運用や収益分配などの自由度の高さを求める商品が急増した。ただし、毎月分配型投資信託には、分配金原資を確保するため、短期売買せざるを得ないという潜在的な問題がある。長期投資の視点が欠けることは、リスクやコストの負担増につながり、特別分配金(元本を取り崩して支払われる分配金)の制度とともに、結果として信託財産を毀損(きそん)する懸念がつきまとう。こうした投資信託商品の存在には品ぞろえ的な意義はあるが、それが主流となる(2011年から2014年にかけて、毎月分配型投資信託の純資産総額はETF〈上場投資信託〉を除く株式投資信託全体の6割以上を占めた)のは投資信託社会の未熟さを示すことにほかならない。なぜなら、毎月分配型は、株式投資信託制度の自由度を突いた設計思想を背景とするが、投資家への訴求力があり、そうした売りやすい商品を企画・販売する運用会社・販売会社の姿勢や、それに迎合する投資家の金融リテラシー水準の低さなどが問題視されるからである。

 これまで投資信託、とくに株式投資信託は高い信託報酬・手数料などに加えて、パフォーマンス(運用成果)がかならずしも投資家の付託に十分にはこたえていない、という批判や指摘がなされてきた。コスト面では、ノーロード・ファンド(販売手数料が無料の投資信託)の増加など改善傾向がみられるものの、投資信託の運営サイドには、専門家としてのパフォーマンス向上への努力はもちろんのこと、個人投資家を啓蒙(けいもう)し育成していくような意識・行動も求められる。そうした取組みが個人投資家の金融リテラシー向上につながり、ひいては投資社会の発展に資することにもなるからである。

 なお、発足以来の株式投資信託の純資産額は、株式市場の動向による増減を繰り返しながらも、趨勢(すうせい)的には増加傾向をたどり、1989年(平成1)末には45兆5494億円にまで拡大した。その後、バブル経済崩壊に伴い急減し、1997年末には9兆9865億円までの減少となった(ピーク比減少率78%)。しかし、これをボトム(底)に、1998年の金融システム改革法制定などを追い風に漸増傾向に転じた。その後は「貯蓄から投資へ」の流れに伴うNISA(ニーサ)(少額投資非課税制度)の普及・拡大などもあり、2023年(令和5)末時点では181兆3455億円に達している。

[高橋 元]2024年8月16日

©SHOGAKUKAN Inc.

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