日本大百科全書（ニッポニカ）

硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科に属する海水魚。岩手県から熊野灘（くまのなだ）、本州中部沖合いの黒潮流域、小笠原（おがさわら）諸島海域など西部太平洋、中部太平洋に分布する。体高はすこし高いが、頭長より低い。吻（ふん）は丸く、短い。目は比較的小さく、吻端からよく離れる。頭長は眼径のおよそ2.5倍。背びれの起部は腹びれ基底（付け根の部分）のすこし前方から、臀（しり）びれ起部は背びれ基底後端よりもすこし後方から始まる。背びれは12～14軟条、臀びれは12～13軟条、胸びれは10～12軟条、腹びれは8軟条。側線有孔鱗（ゆうこうりん）数は34～35枚。鰓耙（さいは）は上枝に7～8本、下枝に15～17本。

　また、発光器は種の重要な特徴である。眼前上部発光器Ant（図中③、以下同）と眼上発光器Suo（④）はない。鼻部背側発光器Dn（①）は小さく円形、鼻部腹側発光器Vn（②）は楕円（だえん）形で大きく（とくに成熟雄では大きい）、目の前縁下部にあり、両発光器は広く離れている。眼下発光器So（⑤）は目の中央下にある。尾びれ前発光器Prc（⑱）は4個で、最上のものは発光器の直径1個分、側線より下に位置する。胸びれ上発光器PLO（⑦）は胸びれ基底上端と側線の中間にあり、小さい発光鱗をもつ。肛門（こうもん）上発光器SAO（⑫）は3個で、ほぼ斜め直線状に並び、最上のものは体側後部発光器Pol（⑭）とともに、発光器の直径1個分、側線より下にある。胸びれ下発光器PVO（⑧）は2個で、上のものは胸びれ基底上端よりも下にある。腹びれ上発光器VLO（⑨）は側線よりも腹びれ基底に近い。前部臀びれ発光器AOa（⑬）は5～6個で、1番目と最後のものは高位にある。後部臀びれ発光器AOp（⑮）は4～5個。1番目と2番目の前部臀びれ発光器の間隔は、最後の後部臀びれ発光器と1番目の尾びれ前発光器の間隔と同じ。また、1番目と2番目の前部臀びれ発光器を結ぶ線は斜め前上方へ向かい、その延長線は2番目の肛門上発光器の上を通る。尾柄（びへい）には発光腺（せん）がない。

　最大体長は13センチメートルほどになる。沖合いの水深200～300メートルにすみ、夜間に水深100メートル以浅まで日周鉛直移動をする。中層引網（ひきあみ）でとれる。

　本種は1番目の前部臀びれ発光器が高位にあり、2番目のものと結ぶ線が斜め前上方へ向かうという特徴を、近縁種のコビトハダカ、オトメハダカD. mollisなどと共有するが、本種は全鰓耙数が多くて22本以上あることで区別できる。

［尼岡邦夫］2024年11月18日