日本大百科全書（ニッポニカ）

硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科に属する海水魚。岩手県から房総（ぼうそう）半島沖、九州・パラオ海嶺（かいれい）、千島（ちしま）列島南部海域、ベトナム、オーストラリア南東岸、ニュー・カレドニア、ハワイ諸島、アフリカ沿岸など太平洋、インド洋および大西洋に広く分布する。体は短くて前半部で非常に高く、体高は頭長とほとんど等しい。吻（ふん）は丸く、著しく短い。目は大きく頭の前端近くに位置する。背びれと臀（しり）びれは14～16軟条、胸びれは10～11軟条、腹びれは8軟条。側線鱗（りん）数は36～37枚。鰓耙（さいは）は上枝に7～9本、下枝に14～16本。

　また、発光器は種の重要な特徴である。小さい眼前上部発光器Ant（図中③、以下同）が眼窩（がんか）の前縁背部の直前にある。鼻部背側発光器Dn（①）と鼻部腹側発光器Vn（②）は大きくて、両発光器は連続するが、左右のものはつながらない。この発光器は目の中央下まで伸び、後端は丸く膨らむ。尾びれ前発光器Prc（⑱）は4個で、最上のものは側線のすこし下に位置する。肛門（こうもん）上発光器SAO（⑫）は3個で、直角に近い逆L字状に折れ曲がり、最上のものは体側後部発光器Pol（⑭）とともに、発光器の直径1個分、側線より下にある。胸びれ下発光器PVO（⑧）は2個で、上のものは胸びれ基底（付け根の部分）上端よりも下にある。前部臀びれ発光器AOa（⑬）と後部臀びれ発光器AOp（⑮）はそれぞれ6個。尾柄（びへい）には発光腺（せん）がない。

　最大体長は7.5センチメートルほどになる。水深375～1000メートルにすみ、夜間に水深90～850メートルまで日周鉛直移動をする。

　体が短くて体高が高いことでエビスハダカに似るが、エビスハダカは眼前上部発光器がないこと、鼻部背側発光器と鼻部腹側発光器がつながらないことなどで本種と容易に区別できる。

［尼岡邦夫］2024年11月18日