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登記請求権

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登記請求権
とうきせいきゅうけん

登記義務者に対して登記の申請につき協力を求める権利。実体的な権利関係およびその変動の過程と登記上のそれとが一致しない場合に、その不一致という事実から登記権利者に認められる実体法上の権利である。甲の所有不動産について乙名義の偽造登記がされている場合や、乙が甲に不動産を売った場合などにおける甲は登記請求権を有する登記権利者であり、乙は登記義務者であるとされる。

 一般的にいえば、登記権利者は、登記をすることによって利益を受ける者であり、反対に不利益を受ける者が登記義務者である。しかし、この区別はかならずしも明確ではない。たとえば、買い主は登記をすることによって利益を受けることは明らかであるが、売り主も登記を相手方に移転することによって利益がある場合もあり(固定資産税を免れるなど)、この場合には、売り主から買い主に対し登記の移転(引取り)を請求する権利があるといえる。したがって、買い主および売り主は登記権利者であると同時に登記義務者であることになろう。

 登記請求権は、実体的な権利関係およびその変動の過程と登記上のそれとが一致しない場合に、両者を一致させるために認められる権利である。そして、2004年(平成16)の不動産登記法改正前は、甲→乙→丙と権利が移転した場合に甲→丙という権利の移転があったように登記をすること(中間省略登記)も、乙の同意があれば一般に有効と解されていた(最高裁判所判決昭和40・9・21、民集19巻6号1560頁)。しかし、上記の不動産登記法の改正により、登記をするためには原因証明情報の提供が必要(同法61条参照)とされたため、中間省略登記の申請がされても、登記官が登記原因証明情報から物権変動の過程を知ることができ、それと異なる申請は却下されることとなった。そこで、現在では、中間省略登記を認めることには否定的な見解が多い。そして、最高裁判所も、「不動産の所有権が、元の所有者から中間者に、次いで中間者から現在の所有者に、順次移転したにもかかわらず、登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において、現在の所有者が元の所有者に対し、元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは、物権変動の過程を忠実に登記記録に反映させようとする不動産登記法の原則に照らし、許されない」とした(最高裁判所判決平成22・12・16、民集64巻8号2050頁)。この判例は、真正な登記名義の回復を原因とする中間省略登記の請求を否定したものであり、中間省略登記を一般的に否定するものではないが、今後は、「物権変動の過程を忠実に登記記録に反映させようとする不動産登記法の原則」(前掲判旨)からは、中間省略登記が認められにくくなると考えられる。

[高橋康之][野澤正充]2025年1月21日

©SHOGAKUKAN Inc.

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