土地およびその定着物(民法86条1項)。動産とともに「物」を構成する概念である。土地には、その構成部分たる地中の土砂岩石なども含まれる。定着物とは継続的に土地に付着された物で、建物・樹木・橋・石垣などがこれに属する。定着物は原則として土地の一部として取り扱われ、独立の不動産とはならないが、次のような例外がある。①建物 建物は土地から独立した別個の不動産として取り扱われる(不動産登記法2条1号)。②樹木 樹木の集団は、「立木(りゅうぼく)ニ関スル法律」による登記をすることによって独立の不動産となる(同法2条1項)。また、同法による登記をしていない場合にも、標識を立てるなどのいわゆる明認方法が施されると、樹木は土地から独立した不動産として取り扱われることが判例法上認められている。
不動産は動産とは異なった法律的取扱いを受けることが多い。まず、不動産はその所在が一定していることから、古くから公示方法として登記制度が発達しており、その権利の変動は登記をしなければ第三者に対抗できない(民法177条)。これに対して動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない(同法178条)。次に、不動産は近代以前には個人あるいは家族に属する総財産の大部分を占めていたことから、一般に動産よりも財産的価値が高いと考えられ、動産に比べて厳重な取扱いを受けてきている。また、強制執行も慎重な手続を経て行われる仕組みになっている(民事執行法43条以下)。
近年は、所有者不明の土地が生じ、その利用が阻害される等の問題が起きている。もっとも、「所有者不明土地」についての統一的な定義はなく、法律によって異なる定義が用いられているが、一般的には、所有者不明土地とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、または、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地であるとされている。そして、このような所有者不明土地が発生する最大の要因としては、相続登記の申請が義務ではなく、申請しなくても不利益を被ることは少なかったことがあげられた。また、土地所有権の登記名義人の住所が変更されても、住所変更登記が義務ではなく、かつ、自然人・法人を問わず、転居・本店移転等のたびに登記するのには負担を感じ、放置されがちであったことなども、その発生原因となっていたとされる。そこで、2018年(平成30)に「所有者不明土地法」(正式名称は「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」平成30年法律第49号)が制定されて所有者不明土地の取扱いが明確化された。また、所有者不明土地の発生を予防する方策として、2021年(令和3)の不動産登記法の改正では、相続登記の申請を義務化し、その促進を図るとともに、住所変更未登記への対応のための仕組みが設けられた。