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日本大百科全書(ニッポニカ)

藻類

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藻類
そうるい
algae

藻類は、系統分類学的には一つのグループ(単系統)ではなく、異なる祖先をもった複数のグループ(多系統)からなる生物群の総称である。古代より「藻」は肉眼的な大きさを有する光合成生物(広義の植物)のうち水中にすむものをさしていたが、現代の生物学では、「藻類」は酸素分子を発生するタイプの光合成を行う生物のうち、陸上植物もしくは有胚(ゆうはい)植物(コケ植物、シダ植物、種子植物)を除いたものと定義される。約6万5000種が知られている。そのなかには植物界のみならず、黄色生物や原生生物、細菌までもが含まれ、大きさもマイクロメートル(1000分の1ミリメートル)単位のピコプランクトンから数十メートルに達する巨大海藻まで幅広く、色も形態も生殖方法も生活環も生育場所も著しく多様である。

[北山太樹]2025年4月15日

起源

地球上に最初に現れた藻類は原核生物prokaryotesの藍藻(らんそう)(藍色細菌、シアノバクテリアcyanobacteria)であった。現在知られているすべての生物の最終的な共通祖先(LUCA(ルカ):Last Universal Common Ancestor)が誕生したのは約40億年前であるが、最初の10億年間に光合成を行っていたのは紅色細菌や緑色硫黄(いおう)細菌のようなバクテリオクロロフィルをもつ酸素非発生型光合成細菌のみで、そのため原始大気には酸素分子がほとんど含まれていなかった。そのような嫌気的環境では、生物が大型化や多細胞化するのに充分なエネルギーを得ることは望めない。約30億年前に出現した藍藻は、クロロフィルを獲得し、水を分解して酸素を発生するタイプの光合成を行う能力を獲得した最初の生物である。この酸素発生型光合成は、緑色硫黄細菌がもつ反応系に似た光化学系Ⅰと紅色細菌のそれに似た光化学系Ⅱが連結されたもので、遺伝子の水平移動によって成立したと思われる。藍藻の登場は、大気と海洋の酸素濃度を徐々に高め、オゾン層を形成して紫外線を遮り、海水を好気的にするなど地球環境を劇的に変え、約20億年前に原核生物のなかから出現した真核生物eukaryotesの生存とその多様化を可能にした。世界各地に産するストロマトライトstromatoliteは、真核生物が現れる前に繁栄した藍藻の化石である。また、多様な単細胞性真核生物の細胞内に藍藻が色素体(葉緑体)として共生したことで、多種多様な真核藻類が生まれることになった。葉緑体に含まれるDNAも、それがかつて独立した生物(藍藻)に起源をもつことを示している。

[北山太樹]2025年4月15日

系統分類

現代の生物分類は形態のみならず遺伝子の系統解析に基づくようになり、真核藻類の分類学的位置も大きく変動している。生命樹を古細菌(アーキアArchaea)、真正細菌(バクテリアBacteria)、真核生物(ユーカリヤEukarya)の3ドメイン系で構成する分類体系によると、ドメイン真核生物は、ドメイン古細菌のアスガルド古細菌Asgard archaeaに由来し、ドメイン真正細菌のプロテオバクテリアproteobacteriaを細胞内共生させて成立したミトコンドリアmitochondriaと、核膜で包まれた細胞核をもつ生物である。かつて真核生物全体の分類は、細胞学的あるいは生態学的観点に基づき、界kingdomのレベルで行われた時代が長く続き、20世紀中、真核藻類は植物界Kingdom Plantaeや原生動物界Kingdom Protozoa、あるいは原生生物界Kingdom Protistaのなかに置かれてきた。分子系統解析が盛んになる以前、もっとも有力な定説として扱われたリン・マーギュリスLynn Margulis(1938―2011)の五界説(1982)においても、藍藻(らんそう)(原核生物界Kingdom Moneraに分類)以外のすべての真核藻類が原生生物界Kingdom Protoctistaに押し込められた。しかし、近年の分子遺伝学的解析技術の進歩は、真核生物間の系統関係を深いレベルで明らかにしつつあり、界を超えるランクのスーパーグループsupergroupで議論されるようになっている。その結果、原生生物界は解体・消滅し、真核藻類はいくつものスーパーグループに離散することになった。

 今日、真核生物の分類は九つ前後のスーパーグループ、すなわちアメーボゾアAmoebozoa(アメーバ生物)、オピストコンタOpisthokonta(後方鞭毛(べんもう)生物)、エクスカバータExcavata、アーケプラスチダArchaeplastida(一次植物)、クリプチスタCryptista、ハプチスタHaptista、ストラメノパイルStramenopiles(不等毛生物)、アルベオラータAlveolata、リザリアRhizariaなどに再編され、真核藻類は7スーパーグループ12門46綱に所属する(表 藻類の高次分類)。この分類体系も定説というわけではなく、毎年のように修正が試みられ、いまだ不安定である。真核藻類の主要なグループを例にあげると、ミドリムシはエクスカバータ、紅藻・灰色藻・緑藻・車軸藻はアーケプラスチダ(一次植物)、クリプト藻はクリプチスタ、ハプト藻はハプチスタ、褐藻・珪藻(けいそう)・黄緑藻はストラメノパイル、渦鞭毛藻(うずべんもうそう)はアルベオラータ、クロララクニオン藻はリザリアに分類される。ただし、エクスカバータ、ストラメノパイル、アルベオラータ、リザリアには藻類でないものが数多く含まれる。なお、藻類の高次分類の表では、ストラメノパイル、アルベオラータ、リザリアの3系統群が SAR(Stramenopiles+Alveolata+Rhizaria)にまとめられている。

[北山太樹]2025年4月15日

光合成色素と色素体

古くから知られる主要な藻類には、伝統的に色を冠した分類群名をもつものが多い。1836年、ウィリアム・ハーベイWilliam Henry Harvey(1811―1866)は体色に基づき海藻を「紅藻Rhodospermeae」、「褐藻Melanospermeae」、「緑藻Chlorospermeae」の3綱に分類した。当時は人為分類と批判されたこともあったが、その後、藻類の体色が光合成色素の組成によるもので系統進化を反映していることが認識され、この形質は現在の分類体系のなかに生かされている。

 藍藻(らんそう)blue-green algaeは基本としてクロロフィルaのみを有し、藻種によってはクロロフィルb(原核緑藻、プロクロロン)やクロロフィルd(アカリオクロリス)、クロロフィルf(ストロマトライトから発見)をあわせもつ。紅藻red algaeや灰色藻のクロロフィルはクロロフィルaのみで、補助色素のフィコシアニンやフィコエリスリンも藍藻と類似することから、それらの色素体と藍藻との関係が早くから議論されていた。今日では紅藻や灰色藻の色素体(葉緑体)は、前方に2本の鞭毛(べんもう)をもった原生動物が藍藻の1種を細胞内共生させたものであると考えられている。実際、紅藻の色素体は二重の膜をもち、それらは藍藻と紅藻の細胞膜に由来する。灰色藻の色素体は2枚の細胞膜の間に細菌の細胞壁が残っており、藍藻だったときの名残(なごり)と考えられている。このような原始的な色素体はシアネレcyanelleとよばれる。こうした藍藻の最初の細胞内共生(一次共生)によって色素体が成立した生物、すなわち灰色藻と紅藻、そしてクロロフィルaに加えてクロロフィルbを有する、緑藻green algaeから陸上植物までの緑色植物が一次植物(植物界)である。ただし、ケルコゾア門有殻糸状根足虫綱のパウリネラ・クロマトフォラPaulinella chromatophoraもシアネレをもつことが知られており、色素体の一次共生が実は一度限りの現象ではなかったことを示している。

 一方、褐藻brown algaeや珪藻(けいそう)diatomsに代表されるストラメノパイルや、クリプト藻を含むクリプチスタ、ハプト藻を含むハプチスタ、渦鞭毛藻(うずべんもうそう)を含むアルベオラータは、色素体が黄色でクロロフィルaとクロロフィルcを有することから、かつてこれらを一つにまとめるクロミスタ界Chromistaが設けられたことがあった。その多くがクロロフィル以外にもフコキサンチンなど細胞内で赤色を呈する補助色素をもち、体色が黄色になる点で共通するので黄色生物ともよばれる。なお、クロミスタ界からクリプチスタとハプチスタを除外し、リザリアを加えたのが前述のSARである。リザリアのクロララクニオン藻chlorarachniophyteはクロロフィルaとクロロフィルbを含む色素体をもつ。ところで、一次植物の色素体(葉緑体)が二重の膜をもつのに対し、クロミスタ界やSARのほとんどの生物が四重膜の色素体をもつ(アルベオラータは三重膜あるいは色素体をもたない)。クロララクニオン藻の色素体も四重膜である。このことは黄色生物が紅藻を、クロララクニオン藻が緑藻を、細胞内共生させることによって色素体を獲得したことを意味している。その傍証とされているのが、クリプト藻やクロララクニオン藻の色素体内部にみられるヌクレオモルフnucleomorphの存在である。ヌクレオモルフは色素体の内側から二番目の膜(紅藻または緑藻の色素体膜由来)と三番目の膜(紅藻または緑藻の細胞膜由来)の間にみられる細胞小器官であるが、DNAを有していることから、細胞内共生(二次共生)で取り込まれた単細胞性藻類の細胞核の痕跡(こんせき)と推定されている。ミトコンドリアの共生が生物の歴史上一度だけだったのに対し、色素体の共生は複数の系統で何度も起きていることになる。

 渦鞭毛藻に至っては、二次共生生物であるクリプト藻、ハプト藻、珪藻を取り込んだ三次共生の例が知られている。また、一次植物の緑藻を二次共生させた渦鞭毛藻もある(渦鞭毛藻自体が二次共生生物なので「連続的二次共生」とよばれている)。細胞内共生の繰り返しが、藻類の光合成色素の多様性を生んでいるといえる。

[北山太樹]2025年4月15日

細胞と体制

藻類の体は多様性に富む。原核生物の藍藻(らんそう)は、真正細菌と同じペプチドグリカンを含む細胞壁をもち、核膜、ミトコンドリアや色素体などの細胞小器官を欠いている。それに対し、真核藻類の細胞は核膜、ミトコンドリア、色素体を含み、大部分がセルロース繊維の細胞壁をもつ点で共通する(分類群によっては、細胞壁の組成やその外被構造に特殊なものがある)。紅藻の細胞壁には寒天やカラギーナンcarageenan、褐藻ではフコイダンfucoidanやアルギン酸が埋め込まれている。また、紅藻、緑藻、褐藻などには炭酸カルシウムの外層が形成される分類群(石灰藻)がある。ハプト藻の細胞を覆う炭酸カルシウムの鱗片(りんぺん)は古来、円石coccolithとよばれている。珪藻(けいそう)は珪酸質の被殻frustuleを上下2個組み合わせた外被をもつ。

 藻類には、鞭毛(べんもう)を運動させて泳ぐ多様な遊走細胞がみられる(ただし、藍藻と紅藻の細胞は鞭毛をもたない)。緑藻植物は遊走細胞の前方に等長の鞭毛をもち、平泳ぎのように進む。褐藻などストラメノパイルは、側面から出る不等長の2本の鞭毛をもつ(珪藻は1本)。前方を向く長鞭毛にはマスチゴネマmastigonemaとよばれる構造が羽根状について推進力を生んでいる。クリプト藻は前方に両羽根と片羽根の不等長2本の鞭毛をもつ。ハプト藻は前方に等長2本の鞭毛と1本のハプトネマhaptonemaとよばれる構造をもつ。渦鞭毛藻(うずべんもうそう)には、横溝に体を1周する横鞭毛と縦溝に沿って伸びる縦鞭毛をもつ。ユーグレナ藻は、前方に長い鞭毛と痕跡(こんせき)的な短鞭毛の2本をもつ。

 藻類の多くが単細胞性(あるいは群体性)であるが、多細胞性の分類群も複数の系統にみられ、単細胞から多細胞への進化が系統ごとに独立して起こっていることがわかる。とくに緑藻、紅藻、褐藻に多細胞性の種が多く含まれる(褐藻には単細胞性種が知られていない)。褐藻には大型化に成功した種が多く、北海道産のナガコンブは最長で20メートルの長さに育ち、北米でジャイアントケルプとよばれているオオウキモは60メートルに達する海洋最大の生物である。

 巨視的生物のほとんどが多細胞生物であるが、藻類のなかには細胞分裂を行わずに単細胞のまま巨大化に成功した生物がいる。ミルやイワヅタ類などの海産管状緑藻は、核分裂のみを繰り返して成長する多核細胞体coenocyteで、数メートルの体をつくる世界最大の単細胞生物である。

[北山太樹]2025年4月15日

生殖方法と生活環

藻類には、生物の生殖方法と生活環のほぼすべてのパターンがみられる。後生動物metazoaや陸上植物land plantsが、大きくて不動の卵と小さいが鞭毛(べんもう)をもち運動性のある精子(精核)によって受精を行う卵生殖oogamyに限られるのに対して、藻類には卵生殖だけでなく、雌雄の配偶子gameteが同形同大で運動性がある同形配偶isogamyや、大きさや形に著しい差異があるものの雌雄ともに運動性のある異形配偶anisogamyが観察される。たとえば、クラミドモナス(緑藻)とシオミドロ(褐藻)などが同形配偶、ミル(緑藻)とムチモ(褐藻)などが異形配偶、シャジクモ(車軸藻)やワカメ(褐藻)などが卵生殖を採用しており、配偶様式の進化が各系統群で独立して起きていると考えられる。

 生活環life cycleは生物の一生を環状につないだ概念図で、二倍体の胞子体sporophyteで減数分裂が起きて無性の遊走子(n)を生じ、遊走子が発芽後、一倍体の配偶体gametophyteに発生・成長して雌雄の配偶子(n)が形成され、両配偶子が接合・受精すると二倍体の胞子体(2n)に戻るのが基本パターンである。後生動物では、すべての分類群で減数分裂後に配偶子がつくられるので、二倍体(2n)の配偶体だけが現れ、世代交代がみられない。種子植物の配偶体は非常に小さな体になり(花粉と胚(はい))、見かけ上は世代交代を欠いている。これらに対し、藻類ではあらゆるパターンの生活環をみることができる。アナアオサ(緑藻)やアミジグサ(褐藻)では、同形同大の胞子体(2n)と配偶体(n)が交互に現れる同形世代交代alternation of isomorphic generationsが行われる(図 藻類の生活環〈アナアオサ〉)。マコンブ(褐藻)やヒトエグサ(緑藻)では、胞子体(2n)と配偶体(n)の大きさが著しく異なり、かつては別の生物と考えられたケースが少なくなかった。マコンブのように胞子体が大きく数メートルに達し、配偶体は数ミリの糸状体になる場合と、ヒトエグサのように配偶体が大きい場合があるが、どちらも異形世代交代alternation of heteromorphic generationsとよばれる(図 藻類の生活環〈マコンブ〉)。また、ミル(緑藻)やヒジキ(褐藻)は配偶体を欠き、減数分裂直後に雌雄の配偶子を放出するので後生動物と同じパターンの生活環をもつ。さらに、マクサで代表される紅藻は、鞭毛がなく運動性のない不動精子spermatium(n)と卵細胞である造果器carpogonium(n)が受精した直後に個体発生を行わず、受精卵をそのままの状態で大量に複製して果胞子体carposporophyte(2n)を形成する。その後、第三の世代ともいうべき果胞子体から放出された果胞子carpospore(2n)が発芽すると四分胞子体tetrasporophyte(2n)が発生する。そして、減数分裂後に放出される四分胞子tetraspore(n)からは雌雄の配偶体(n)が発生する。この特異な生活環は、鞭毛を欠き、遊走細胞をもたない紅藻特有のもので、受精卵のクローンをつくることで受精確率の低さをカバーする効果があると推測されている(図 藻類の生活環〈マクサ〉)。

[北山太樹]2025年4月15日

分布・生態

藻類は海と陸のほぼ全域に分布し、生育場所も太陽光が届くかぎり、海底、海中、海表面、河川、湖沼にとどまらず、汽水、湿地、温泉、氷雪、流氷、土壌、岩石、大気や、コンクリートなどの人工物にも生育する。さらにはほかの生物の体内からもみつかる。

 海には、大型の底生藻類、いわゆる海藻benthic marine algae、seaweedsと、浮遊性の植物プランクトンphytoplanktonがすむ。海藻は、おもに潮下帯subtidal zoneの太陽光が届く深さまでの海底に生育するが、干潮時に陸となる潮間帯intertidal zoneにも多く生育する。岩盤や小石、貝や亀などの動物の体表面、ほかの海藻やコンクリートのような人工物などの上にも着生する。イワヅタ類(緑藻)などは、砂地にストロンstolonを這(は)わせて生育する。また、ほかの海藻の体内や動物体内に内生する藻もいる。造礁サンゴの多くは褐虫藻zooxanthellaeを細胞内に共生させて光合成を行わせているが、その正体は渦鞭毛藻(うずべんもうそう)である。海洋に浮遊する植物プランクトンは、大きさで分類される。0.2~2マイクロメートルのピコプランクトンpicoplanktonに分類されるプロクロロコッカス(藍藻(らんそう))は原核緑藻で、地球上の光合成生物として最大の生物量と推定されている。2~20マイクロメートルのナノプランクトンnanoplanktonには、ココリスで知られる円石藻(ハプト藻)が含まれる。20~200マイクロメートルのマイクロプランクトンmicroplanktonには、珪藻(けいそう)や渦鞭毛藻が多い。20センチメートルを超えるメガプランクトンmegaplanktonには、アカモク(褐藻)などホンダワラ類の流れ藻が該当する。大西洋のサルガッソー海(藻海)に浮遊する主要種も、ホンダワラ属の一種Sargassum natansである。また、河口など汽水域を好む藻類も少なくない。そこにはアオノリ類(緑藻)、アヤギヌ類(紅藻)などが生育する。

 河川や湖沼などには、淡水に適応した藻類が生育する。大型の藻ではカワノリ、シャジクモ、アオミドロ、マリモなどの緑藻のほか、カワモズク、タンスイベニマダラ、チスジノリなどの紅藻や褐藻のイズミイシノカワなどが知られている。微細な淡水藻類では、アオコをつくる藍藻、オオヒゲマワリ(ボルボックス)、ミカヅキモ、クンショウモなどの緑藻、ハネケイソウ、タルケイソウなどの珪藻や渦鞭毛藻などが生育する。温泉からは紅藻のイデユコゴメなどが発見されている。雪や氷の上からは、赤雪をつくるクラミドモナス(緑藻)などの氷雪藻がみつかる。流氷の下に繁茂するアイスアルジーice algaeは藍藻や珪藻が主である。また、池に生息する繊毛虫ミドリゾウリムシの細胞内には、クロレラ(緑藻)が共生する。

 これら水環境以外にも、大気中(気生藻)や岩石中(岩石藻)からも藻類はみつかる。地衣類の体内には藍藻やトレボウクシア藻などが共生し、藻類層を形成している。後生動物でもイヌやネコ、ウシ、人体に寄生して人獣共通感染症を引き起こす病原性の藻類として、トレボウクシア藻のプロトテカProtothecaが知られている。

[北山太樹]2025年4月15日

日本の海藻

日本には、およそ1500種の海藻が分布する。おもに紅藻約900種、褐藻約340種、緑藻約260種からなり、そのうち60種以上が食用とされている。日本の海藻の水平分布は海流の影響を強く受けており、たとえば親潮寒流(千島海流)が支配する北海道太平洋沿岸にはマコンブやナガコンブなどのコンブ類(褐藻)がつくるコンブ藻場が優占し、エゾイシゲ、ヒバマタ、マツモ(褐藻)やダルス、フジマツモ(紅藻)などが生育する亜寒帯性海藻相である。それに対し、本州・四国・九州の黒潮暖流(日本海流)に洗われる太平洋沿岸と、対馬暖流が流れる日本海沿岸には、アカモク、オオバモク、ホンダワラ、ヒジキなどのホンダワラ類(褐藻)やアラメ、カジメ、ワカメ(褐藻)などによる海中林が優占し、ウミウチワ(褐藻)、マクサ、ヒラクサなどのテングサ類やムカデノリ類、コトジツノマタ、トサカノリ(紅藻)、アオサ類、ミル類(緑藻)などがよく生育する温帯性海藻相である。一方、日本海沿岸にはツルアラメやフシスジモクやスギモク(褐藻)などといった日本海特産種が知られている。また、南西諸島や小笠原諸島などは、ラッパモク(褐藻)やコナハダ類(紅藻)などのほか、カサノリ、イワヅタ類、サボテングサ類などの緑藻が多く分布する亜熱帯性海藻相である(図 紅藻植物のおもな種類①・②、褐藻植物のおもな種類①~③、緑藻植物のおもな種類)。

[北山太樹]2025年4月15日

©SHOGAKUKAN Inc.

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