夜間の最低気温が25℃以上の日をいう。熱帯のように暑く寝苦しい夜のことであるが、気象統計では最低気温が夜明け前に観測されることが多いこと、夜間がいつからいつまでというはっきりした時間帯が決まっていないことから、多くの場合、一日の最低気温が25℃以上の日を熱帯夜として扱っている。このため、まれには、明け方までの気温が25℃以上の夜であっても、その後に寒気が入って気温が下がれば熱帯夜の日ではなくなるということもおきており、厳密な意味での熱帯夜の統計はない。1967年(昭和42)ころから使われたことばで、背景には、気象庁が1963年にコンピュータを初めて使用し、3年がかりで刊行した日本気象資料の存在がある。これは、1931年(昭和6)~1960年の30年間の平均を平年値とし、日最高気温が30℃以上の日数や日最低気温が25℃以上の日数などを含めた詳細な統計である(以後、西暦の一の位が0になる年までの30年平均を平年値と定義)。なお、日最高気温が25℃以上の日を夏日、日最高気温が30℃以上の日を真夏日、35℃以上の日を猛暑日といい、熱帯夜とともに暑さを示す指標となっている。
熱帯夜は、一般に、北海道で少なく、西日本、沖縄で多い傾向がある。都市化の影響が比較的小さく、長期間の観測が行われている観測地点をもとに計算すると、1地点あたりの近年の熱帯夜は年間約26日で、100年前の約9日の約2.9倍に増えており、都市化が進んでいる地方、とくに大都市ではヒートアイランド現象の影響で熱帯夜の増加が著しい。東京の熱帯夜は、戦後すぐの時期では年間10日程度であったが、昭和末期には40日に達することも珍しくなくなり、2010年(平成22)は56日もあった。おもな都市の平均熱帯夜年間日数(統計期間:1991~2020年)は、旭川0.0日、札幌0.1日、仙台2.7日、東京17.8日、新潟10.9日、長野1.1日、名古屋25.6日、大阪41.5日、福岡38.7日、鹿児島55.8日、那覇107.3日である。
なお、気象官署観測値における日最低気温30℃以上の日は、2000年7月31日の富山が最初であった。以降、東京などでも観測されている。このため、特別な名称が必要との意見があり、「超熱帯夜」とよぶこともある。
熱中症では最高気温が注目されるが、夜間に気温が下がらない熱帯夜(超熱帯夜)は、睡眠不足による体力低下を引き起こす。睡眠不足は、注意散漫による事故や、熱中症などの病気にかかりやすくなるので、節電が求められている夏であっても、しっかり睡眠をとるくふうが必要である
2025年4月15日