フリースクールについて明確な定義はないものの、文部科学省は一般に、不登校の児童・生徒に対し、学習活動、教育相談、体験活動などを行っている民間の施設としている。
アメリカでは、19世紀までのこの用語の意味は「私立・無償の慈恵学校」をさすものであった。1960年代以降は、社会活動団体やカウンター・カルチャー・グループ(対抗文化集団)によって設立された短命の教育施設をさしたが、これらは旧来の学校の権威を否定し、教育上の賞罰を廃止するなど、脱学校を特徴としていた。
日本では、いわば、既存の学校にかわる新たな学校形態の可能性を探る主体として、個人や団体が維持設置する教育施設、あるいはこれらの施設が自称するものとして登場し、不登校の児童・生徒の増加を背景としながら1990年代ごろより全国各地にフリースクールが誕生した。また同時に、適応指導教室(2003年に教育支援センターに名称変更)などで不登校の児童・生徒の学校外学習の機会を提供し、その学習をもって、正規の学校の学習時間とみなすなどの措置も広がった。これらは、社会が当然視してきた正規の学校による学習内容や規律、児童・生徒像などの改変を求めていたものと考えられる。
こうしたなか、2016年(平成28)に教育機会確保法(正式名称「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」平成28年法律第105号)が制定された。その第3条で「不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること」が基本理念の一つに据えられ、第13条で「不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性」が明文化されて社会的認知が大きく進んだ。さらに、2023年(令和5)3月に文部科学省が「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめた。その主たる取り組みの一つに「多様な学びの場、居場所の確保」が位置づけられ、こども家庭庁とも連携して、学校や教育委員会などとNPOやフリースクールとの連携強化、フリースクールや利用者への支援体制整備が各自治体で進められつつある。また、2024年8月29日付の文部科学省通知「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」によって、学校と十分な連携協力体制を保ち、学校がフリースクールに通う児童・生徒の学習活動の状況などについて定期的・継続的に把握する必要があるとされ、その意味や意義、把握の方法や評価・評定への反映をめぐって、改めて議論を深める必要が浮上してきている。