学習指導要領にとらわれず、不登校の児童・生徒の実態に配慮した特別な教育課程をもつ学校。正式名は「不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校」で、文部科学大臣が指定する。2023年(令和5)8月に「不登校特例校」から「学びの多様化学校」へと名称が変更された。構造改革特区での規制緩和の一環として、2004年(平成16)に東京都八王子市の高尾山(たかおさん)学園に初めて導入され、2005年に学校教育法施行規則改正で制度化されて全国に広がった。学習指導要領の規定に縛られず、不登校の児童・生徒にあったカリキュラムを整えており、①年間総授業時間を750~770時間程度と規定より1~2割抑える、②習熟度別や、学年の枠を超えたクラス編成をする、③体験型学習、校外学習、ボランティア活動に力を入れる、④教室に入るのが苦手な子どもに適した小グループ指導や個別学習の時間を設ける、⑤専任教員の増員やスクールカウンセラーを設置する、などの柔軟な対応をとる学校が多い。都道府県や市町村の枠を超え、遠方から入学する児童・生徒が多いという特徴をもつ。
2016年制定の教育機会確保法(正式名称「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」平成28年法律第105号)は、学びの多様化学校の整備を国や自治体の努力義務とし、2023年3月に取りまとめられた「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を契機に、文部科学省は全国に300校を設置するという目標を掲げた。設置促進のために、長年、学校の運営や教育活動に携わり、専門的な知見をもち、実践にもかかわった経験者を「学びの多様化学校マイスター」として委嘱し、教育委員会に派遣するなどの取り組みが始まっている。学びの多様化学校は年々増加し、2025年度時点で全国に58校ある。