硬骨魚綱ヒメ目オニアオメエソ科に属する海水魚。土佐湾、オーストラリア北東岸に分布する。体は細長く、わずかに側扁(そくへん)し、体高は背びれの起部でもっとも高い。頭部は強く縦扁する。吻(ふん)は背面から見るとほとんど三角形状で長く、吻長は眼径より長い。目は大きくて楕円(だえん)形で、上向きについている。両眼間隔域は狭く、わずかにくぼむ。口も大きく、すこし斜めに開き、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下に達する。下顎の先端は上顎よりわずかに前に出る。上下両顎の歯は小さく、歯帯を形成し、下顎の歯帯は上顎のものよりも幅が広い。各顎の前部に4本の犬歯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に1列と口蓋骨に3列の歯があり、舌上にも1~2列の大きい歯がある。鰓耙(さいは)は多くの棘(きょく)が生えた小さい歯板で、上枝に4~5個、下枝に9~12個。頬(ほお)、鰓蓋、体は薄い円鱗(えんりん)で覆われ、きわめてはがれやすい。尾びれ基底(付け根の部分)を除く各ひれは無鱗。側線は体の中央部をまっすぐに走る。側線有孔鱗数は47~48枚で、側線上方鱗は4枚、下方鱗は5枚。背びれ基底の後端はほぼ体の中央部に位置する。背びれは10軟条で、最初の2軟条は不分枝。小さい脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)が臀(しり)びれの基底後部の上方にある。臀びれは10~12軟条で、前3軟条は不分枝。胸びれは長く、背びれ基底の中央部下に達する。腹びれは背びれ起部のすこし前の下方から始まり、肛門(こうもん)を越えて後方に達する。頭と体は淡黄褐色で、背方ではより暗色で、腹方では白色。側線上に暗灰色の斑紋(はんもん)が並ぶ。目は緑色で、肛門は黒い。背びれの前縁と尾びれ上葉と下葉の基底と縁辺は暗色、その他の部分とほかのひれは淡色。最大体長29センチメートルほどになる。大陸棚斜面の上部にすむ。日本では土佐湾で2個体が底引網でとれているだけである。
本種は魚類分類学者の蒲原稔治(かもはらとしじ)によって、アオメエソ科のBathysaulops属の新種として記載されたが、後にBathylaulopsis属に移された。しかし1996年にボールドウィンCarole C. BaldwinとジョンソンG. David Johnson(1945―2024)は本種に対して新属のオニアオメエソ属Bathysauroidesを設立した。その後、ハーテルKarsten E. HartelとスティアスニーMelanie L. J. Stiassny(1953― )は1986年に本属をアオメエソ科からチョウチンハダカ科Ipnopidaeに移した。2002年に佐藤友康(さとうともやす)(1973― )と中坊徹次(なかぼうてつじ)(1949― )はオニアオメエソ属に対して独立したオニアオメエソ科Bathysauroididaeを創設。この科は頭が著しく縦扁すること、口が大きく、上顎の後端が目の後縁近くに達すること、背びれの起部が腹びれ起部よりも後方にあることなどでアオメエソ科やナガアオメエソ科と区別できる。