硬骨魚綱ヒメ目アオメエソ科に属する海水魚。熊野灘(くまのなだ)、土佐湾、奄美(あまみ)大島近海、九州・パラオ海嶺(かいれい)に分布する。体は細長く、胴部では円筒形で、尾部では側扁(そくへん)する。眼窩(がんか)径は吻長(ふんちょう)よりはるかに大きい。両眼間隔域は平坦(へいたん)。口は斜めに開き、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の前縁よりも後方に達する。下顎の先端は上顎より前に出る。上下両顎の歯は小さくて、狭い歯帯を形成する。下顎前部に外歯叢(がいしそう)(密集した小さい歯のかたまり)がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)の外縁、口蓋骨、舌上に歯帯がある。体は円鱗(えんりん)で覆われ、吻部と上下両顎は無鱗。側線鱗数は52~53枚。背びれは高く、体の前3分の1よりかなり後方にあり、11軟条で、前の2軟条は不分枝。脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)は臀(しり)びれの第1軟条の上方にある。胸びれの先端はとがり、背びれ基底(付け根の部分)の後端を越える。腹びれ起部は背びれ第3軟条下方にある。腹びれは9軟条からなり、第1軟条を除いて分岐し、第1~4軟条は伸長して、先端は丸い。体は背側面では青黒色、腹側面では銀白色。腹びれ上方に幅の広い暗色斑紋(はんもん)、背びれと脂びれの中間、脂びれの下方および尾びれ基底部の背面にもやや狭い暗色の斑紋がある。口腔(こうこう)内は黒い。水深500~700メートルの大陸棚斜面の上部にすみ、底引網、釣りなどで漁獲される。おもに底生の小形の無脊椎(むせきつい)動物を食べる。最大体長は30センチメートルに達する。本種は日本の近海から6個体(体長19.2~30.0センチメートル)が報告されている。また、インターネット上では八丈島、駿河(するが)湾などから捕獲されたとの記録が見られるが、標本は明確にされていない。
本種は魚類研究者の岡村收(おさむ)(1933―2008)によって1982年(昭和57)にアオメエソ属の一種Chlorophthalmus sp.として初めて報告され、後にバケアオメエソの和名が与えられた。アオメエソやマルアオメエソC. borealisに似るが、本種は体高が高く、口腔内は黒色で、腹びれの先端が丸く、突出することなどで異なる。しかし、報告された個体はいずれも大きかったので、既知種の老成魚の可能性が考えられるとして新種記載がされていなかった。2024年(令和6)時点でもChlorophthalmus sp.のままである。