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不妊治療における体外受精の一形態。通常の体外受精では、女性の体内から取り出した卵子に精子を振りかけて受精を促すのに対し、顕微授精は、体内から取り出した精子や卵子を顕微鏡で確認しながら受精の手助けを行う方法をさす。顕微授精として現在おもに実施されているのは、顕微鏡を用いて精子の形態や運動能力を確認したうえで、そのなかから一つの精子を選び、その精子をマイクロピペットとよばれる微細なガラス管で卵子の中に直接注入して受精を促す卵細胞質内精子注入法(ICSI(イクシー))である。通常の体外受精では受精が成立しない場合や、男性側の精子の数が極端に少ないなど、顕微授精以外の方法では受精成立がむずかしいと考えられる場合に実施される。
ICSIは1992年に世界で初めて報告された比較的新しい方法であるが、その後急速な広がりをみせ、日本国内での年間実施件数は2022年(令和4)で18万7816件(不妊治療実績全件数54万3630件のうちの約35%)となり、年々増加傾向にある。なお、2022年4月には、顕微授精を含む不妊治療が公的医療保険の対象となり、費用負担の軽減が図られている。