水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスの感染によっておこる水疱(すいほう)性皮膚疾患の一種。このウイルスは免疫のない人に感染すると水痘(水疱瘡(みずぼうそう))を生じ、免疫のある人では帯状疱疹として発症するので、小児では水痘、成人では帯状疱疹をみることが多い。一定の末梢(まっしょう)神経支配領域に神経痛とともに発赤(ほっせき)を伴った小水疱が集まった病変が生じ、それが神経に沿って帯状に並ぶのが特徴で、同時にリンパ節が痛んで腫(は)れる。神経痛は発疹(ほっしん)と前後して現れ、その程度は軽い痛み、かゆみ、知覚過敏程度のものから激痛に至るまでさまざまで、激痛が帯状疱疹後神経痛として長期間続くことがある。水疱は一部は膿疱(のうほう)となり、そのまま乾いて固まったり、びらん、痂皮(かひ)(かさぶた)を経て、通常は3週間前後で治癒する。侵される神経では顔、頭部の三叉(さんさ)神経、胸背部の肋間(ろっかん)神経が多いが、全身いずれの神経領域にもみられる。三叉神経ではとくに痛みが強く、眼球も侵されるので重症化のリスクも伴う。高齢者や免疫不全を伴う基礎疾患のある人では、全身に水痘様の発疹を伴うことがあり、水疱が深い潰瘍(かいよう)となったり、帯状疱疹後神経痛が長期間残ることがある。治療としては、抗ウイルス薬の内服が基本となる。重症例や免疫不全のある患者などに対しては入院治療(抗ウイルス薬の点滴投与)が行われることもある。帯状疱疹後神経痛には神経ブロック療法も行われている。
なお、帯状疱疹の予防にはワクチンの接種が有効であり、原則50歳以上の人を対象として任意接種が実施されてきたが、2025年(令和7)より接種費用が公費で補助される定期接種となり、原則として65歳になった高齢者と、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫不全がある60~64歳の人がその対象となっている。