硬骨魚綱ヒメ目エソ科に属する海水魚。北海道南部以南の日本海と太平洋の沿岸に分布する。体は細長く、胴部は円筒形で、頭と尾柄(びへい)は縦扁(じゅうへん)する。尾柄高はその幅とおよそ等しい。目は頭の前方に位置している。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目よりもはるかに後方に達する。上顎長は眼後長(目の後縁から鰓孔(さいこう)までの長さ)と同長か、わずかに長い。口蓋(こうがい)部の外側の歯は3列で、前の歯はほかの歯より長い。鋤骨(じょこつ)(頭蓋床の最前端にある骨)に7~18本、舌の上におよそ4~6列の歯がある。鱗(うろこ)は小さくてややはがれづらく、側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は59~65枚。側線鱗は尾柄部で強いキール(竜骨(りゅうこつ))を形成する。脊椎骨(せきついこつ)数は59~60個。背びれは10~12軟条で、体の中央よりやや前方寄りに位置し、その起部は腹びれ起部より後方にある。臀(しり)びれ中央部上方に脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)がある。胸びれは短く、先端は腹びれの起部に達しない。臀びれは小さく、9~11軟条。尾びれは二叉(にさ)する。体の背側面は褐色で、腹部は白い。背びれは暗色で、胸びれの上3分の2は暗黒色。腹びれと臀びれは淡色。尾びれは上葉が灰色で、下葉が暗色。もっとも冷水を好むエソ類で、北海道でも見られる。沿岸の浅海からやや深みの砂泥底にすみ、おもにカタクチイワシ、ハゼ類、ネズッポ類などの魚類を食べ、ほかに軟体類、甲殻類なども食べる。産卵期は5~8月で、産卵場所は南日本各地に見られる。卵は分離浮性で、表面に亀甲(きっこう)模様がない。孵化仔魚(ふかしぎょ)は全長4.1~4.7ミリメートルで、全長10ミリメートルの仔魚には腹面に7個の半月形の黒い斑紋(はんもん)がある。体長は紀伊水道では1年で雌は約16センチメートル、雄は約13センチメートル、3年で雌は約28センチメートル、雄は約26センチメートル、4年で雌は約33センチメートル、雄は約31センチメートルに成長し、雌は雄より成長がよい。最大体長は50センチメートルほどになる。おもに底引網で、ほかに建網(たてあみ)、延縄(はえなわ)、小形定置、一本釣りなどで漁獲され、高級な練り製品の原料にされる。
2019年にラッセルBarry C. Russellは台湾でとれた個体をトカゲエソS. esoに同定しているが、日本産のトカゲエソS. elongataとタイプ標本を含めて詳細に比較研究する必要がある。本種が属するマエソ属のうち、本種のように胸びれが短く、その先端が腹びれ起部に達しない特徴を有する種は、日本近海からは、ほかにコソデエソS. micropectoralisとコウカイトカゲエソS. microlepisが知られているが、コソデエソは側線有孔鱗数と脊椎骨数が少ないこと(普通は57枚、50~53個)、コウカイトカゲエソはこれらの数が多いこと(64~70枚、63~64個)などで本種と区別している。