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日本大百科全書(ニッポニカ)

登録有形文化財

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登録有形文化財
とうろくゆうけいぶんかざい

国宝や重要文化財など、国や自治体が「指定」する文化財保護の制度とは別に、所有者が自ら申請することで「登録」される文化財の制度にのっとって定められた有形の文化財。建造物と美術工芸品の分野がある。

 1996年(平成8)に文化財保護法が改正され、登録有形文化財が制度化されて以来、建造物は毎年おおむね3回新規に登録される。1回に100~200件ほどが登録され、2006年(平成18)からは美術工芸品の分野でも登録が始まった。2025年(令和7)3月時点で、建造物の登録は1万4376件、美術工芸品の登録は18件にのぼっている。

 国や自治体が「指定」する文化財になると「釘(くぎ)1本自由に打てない」など所有者にさまざまな制限がかかり、指定されるのを敬遠するケースもあったことから、保護だけでなく、ある程度所有者が自由に改変し、活用もできる新たな文化財のあり方を目ざして創設された制度である。

 登録有形文化財(建造物)の登録基準は、「建設後50年を経過している」もので、かつ「国土の歴史的景観に寄与している」「造形の規範となっている」「再現することが容易でない」の三つの条件のうち、いずれかに当てはまるものとされている。登録を希望する場合は、所有者と地元自治体の教育委員会との連絡・調整を経て、専門家による調査を行ったうえで、文化庁に申請する。

 登録されると、保存・活用のために必要な修理の設計監理費の2分の1が国から補助されたり、家屋の固定資産税が2分の1に減免されたりするなどの優遇措置がある。また、相続・贈与の場合も財産評価額の30%が控除される。

 建造物の種類別の内訳は、住宅6456件、宗教2123件、産業(3次)1774件、産業(2次)1494件、交通527件、文化福祉506件、学校457件、生活関連335件などとなっている。時代別にみると、江戸以前2566件、明治4511件、大正2907件、昭和4392件である(2025年3月時点)。件数は、施設全体を1件と数えるのではなく、建造物1棟を1件と数えるため、たとえば、新潟県の彌彦(やひこ)神社では「拝殿」「本殿」など境内にある25件の建造物がそれぞれ登録されている。

 登録された建造物は、全国的な知名度をもつものから、その地域の伝統産業などにかかわる施設、ダムや橋などの土木施設、地元でもほとんど知られていない個人の民家まで幅広く、有名なものでは、東京タワー(東京都、1958年建造、2013年登録)、平安神宮大鳥居(京都府、1928年建造、2002年登録)、大阪城天守閣(大阪府、1931年建造、1997年登録)、富士屋ホテル本館(神奈川県箱根町、1891年建造、1997年登録)などがある。

 登録物件には、都道府県ごとに通し番号が振られており、登録されるとその番号を記したプレートが文化庁から授与される。たとえば、東京タワーの番号は「13-0295」で、先頭の2桁の数字は都道府県を示している。そのため、東京都(13)で295番目に登録された物件であることがわかる。このプレートは、建物の玄関や内部に掲出されていることが多く、登録有形文化財であることのわかりやすい目印になっている。

 なお、登録される建造物は年々増加する一方、火災、地震による倒壊、所有者による取り壊しなどで消滅したことにより、登録が抹消されることもある。また、国や自治体の指定文化財となった場合も、原則として登録が抹消される。たとえば、京都府の真宗本廟(ほんびょう)(東本願寺)の御影堂(ごえいどう)や阿弥陀堂(あみだどう)などの主要な伽藍(がらん)は、2019年に国の重要文化財に指定されたことにより、それまでの登録有形文化財からは抹消された。こうして2025年3月までに884件が抹消されている。

 登録有形文化財は、維持・保存のために多額の費用や適切な管理が必要であるが、とくに個人所有の場合には、自助努力だけでは維持が困難になることも多い。そのため、情報交換や文化財の周知を目的として、所有者の組織がいくつかの都府県にできており、2019年にはその上部組織である「国登録有形文化財全国所有者の会」が結成され、さまざまな活動を行っている。

 美術工芸品の分野の登録対象は、製作後50年を経過したものであって、歴史的・系統的にまとまって伝存したもの、系統的・網羅的に収集されたもので、かつ、文化史的意義、学術的価値、歴史上の意義のいずれかを有するものとされている。「有田磁器(柴田(しばた)夫妻コレクション)」や「建築教育資料(京都帝国大学工学部建築学教室旧蔵)」などが登録されている。

[佐滝剛弘]2025年5月20日

©SHOGAKUKAN Inc.

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