倒壊のおそれや治安・衛生・景観上問題のある空き家の解消を進めるための法律。正式名称は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号)。2014年(平成26)成立、2015年施行。人口減少や高齢化率の上昇などにより十分に管理が行き届かない空き家が増えていることから、市街地の空洞化を防ぎ、火災や倒壊から生命、財産、暮らしを守り、空き家の活用を促進して地域を活性化するねらいがある。市区町村は、①倒壊などの危険性がある、②ごみの放置や悪臭などで衛生上有害である、③周辺の生活環境保全のため放置することが不適切である、など問題のある家屋、店舗、工場などの居住、あるいは使用されていない建築物などを「特定空家等」に指定し、所有者に解体・撤去、修繕、立木竹の伐採を助言、指導、勧告、命令できる。行政代執行などの強制力を伴う措置もできる。市区町村は空き家への立入調査や、所有者を特定するために固定資産税の納税者情報を利用することが可能。勧告後、特定空家等に対する固定資産税の優遇措置(最大6分の1に軽減)を解除し、立入調査の拒否には20万円以下の過料を、修繕命令違反には50万円以下の過料などを科すことができる。2023年(令和5)の改正法では、窓の一部が割れたまま放置されるなど空き家予備軍ともいうべき物件を「管理不全空家等」に指定し、固定資産税の優遇措置の解除を可能とした。また、相続放棄された空き家を所有者にかわって管理・処分する財産管理人制度、台風など緊急時の代執行制度、空き家の建て替えなどを進めやすくする空家等活用促進区域制度、空き家問題の相談にのる支援法人制度などを導入し、早期処分や適正管理を促している。自治体によっては、解体等に要する費用を補助するほか、京都市のように空き家に課税する「非居住住宅利活用促進税」(法定外税)を導入する動きもある。
総務省の住宅・土地統計調査では、2023年時点で、賃貸・売却用や別荘などを含む広義の空き家は全国に約900万戸あり、30年前の2倍に増えた。このうち空家対策特別措置法のおもな対象となる放置された空き家は約386万戸と、同期間で2.6倍に増え、2030年には470万戸に達すると推計されている。国土交通省によると、2024年3月末時点で、本法に基づき空家対策計画を策定した市区町村は1501と全体の9割弱。しかし、本法によって撤去や修繕などをされた特定空家等と管理不全空家等は約2.6万件にとどまっており、政府は2028年までに撤去・修繕された物件を15万件に増やす計画である。