使われずに放置された住宅(空き家)や土地(空き地)の情報をインターネットで公開し、利用希望者に紹介する仕組み。人口減少に伴い、全国で増え続ける空き家を減らし、有効活用して地域活性化につなげるねらいがある。「空き家バンク」のほか、「移住情報バンク」「住まいネット」など名称は多様である。空き家や空き地の所有者に物件情報を登録してもらい、専用サイトに物件の面積、間取り図、築年数、価格、最寄り駅、外観写真、付属設備、学校や病院などの周辺情報を掲載し、地方移住(定住)のほか、観光・イベント施設や民泊施設としての利用を促す目的もある。地方自治体が運営する空き家バンクと、地方の情報を一元化した全国版空き家バンクがある。
空き家の増加は、税収減、市街地の空洞化を招くほか、倒壊や火災の危険性が高まり、犯罪者や不審者による悪用、ごみ投棄、雑草放置などで治安、衛生、生活環境、景観などが悪化するおそれがある。総務省の住宅・土地統計調査によると、2023年(令和5)時点で、賃貸・売却用や別荘などを含む広義の空き家は全国に約900万戸あり、30年前の2倍に増えた。とくに、空き家バンクの対象である、使用されず放置された空き家は約386万戸と同じ期間に2.6倍に増え、2030年には470万戸に達すると推計されている。
過疎が進む地方では、自治体が主導し、1990年代からネットで空き家を紹介する空き家バンクの利用が始まり、自治体が不動産団体などに委託するケースや、所有者が不動産業者などに一定額を払って登録物件の管理を委託する例もみられた。ただし、地方版空き家バンクは紹介物件数が少なく、対象地域も限られるため、利用率が低いという難点があった。そこで、2017年(平成29)から全国共通の空き家バンクのサイト運用が開始された。公募を経て選定された民間不動産サービスのLIFULL(ライフル)とアットホームの2社、それぞれが独自にサイトを運営し、全国の空き家情報をまとめることで、地方ごとにばらばらだった表示形式などが統一され、使い勝手が向上した。2025年2月時点で都道府県や市区町村など約1100の自治体が参加し、約2万0500件の物件が成約済みである。
国は2015年以降、「空家対策特別措置法」(正式名称「空家等対策の推進に関する特別措置法」平成26年法律第127号)を整備・改正し、倒壊の差し迫った空き家(「特定空家等」)やその予備軍(「管理不全空家等」)について修繕・解体・撤去などを助言・指導・勧告・命令できるようにしたほか、空き家バンク全国版の活用、未設置自治体への導入促進策、活用モデル事業などを通じて、2030年時点で放置された空き家を400万戸に抑える目標を掲げている。