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日本大百科全書(ニッポニカ)

天目茶碗

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天目茶碗
てんもくちゃわん

抹茶茶碗の一種。この呼称は、鎌倉時代に中国浙江(せっこう)省の禅寺天目山に学んだ僧侶(そうりょ)が帰国に際して持ち帰った黒釉(こくゆう)のかかった茶碗をわが国で天目とよんだのに始まるとされ、のちにはこの器形(天目形(なり))のものを天目茶碗とよぶようになった。天目茶碗の基本形は、低く小さな輪高台(わこうだい)をもち、すり鉢形で、口縁にスッポン口といわれるくびれのあるのが特徴で、これを天目形という。またその釉は原則として黒釉であるが、のちに白釉(白(はく)天目)も現れた。

 天目茶碗の初めは中国の建窯(福建省建陽県)で焼造された建盞(けんさん)で、文献では五代末期(10世紀中葉)、考古学的発掘調査では北宋(ほくそう)末期(12世紀初頭)が資料の初出である。この建盞はそれまでの青磁にかわって茶碗の王座に位置するようになり、やがて中国全土でその模倣窯が現れたことが近年の四川(しせん)省の窯址(ようし)発掘などで明らかにされている。建盞はわが国ではとくに珍重され、黒釉陶の至芸とうたわれる曜変(ようへん)天目のほか、油滴(ゆてき)天目、禾目(のぎめ)天目、灰被(はいかつぎ)天目に分類されている。建盞に次いで吉州(きっしゅう)窯(江西省)で焼成された玳皮盞(たいひさん)も著名で、これに属するものには玳皮天目、木葉(このは)天目、文字(もじ)天目、梅花(ばいか)天目などがある。建窯が窯中の自然現象で各種の作風をつくりだしたのに対し、吉州窯は釉(ゆう)の二重がけ法によって鼈甲(べっこう)調の巧緻(こうち)を極めた人工文様を案出して、対照の妙を示した。一方、華北の磁州窯では独自の加飾法をくふうして白覆輪(しろふくりん)天目や油滴天目をつくっており、また朝鮮半島には高麗(こうらい)天目(黒(くろ)高麗)がある。わが国では唐物(からもの)茶碗の人気に乗じて鎌倉後期(14世紀)には愛知県の瀬戸窯が黒釉天目茶碗(瀬戸天目)を焼き、桃山時代になると唐津(からつ)焼(黒(くろ)唐津)や美濃(みの)焼(美濃天目)でも天目茶碗が焼造されたが、とくに美濃焼の白釉天目茶碗は白天目とよばれ、初期の志野焼の好資料と目されている。江戸時代に入っても天目茶碗の人気は衰えず全国各地の窯で焼かれ、現在でさえ建盞に倣った黒釉天目茶碗が焼造されている。

[矢部良明]

©SHOGAKUKAN Inc.

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灰被天目茶碗

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