家畜を収容し飼育する建物で、いろいろな付属施設と組みになって、その機能を果たす。畜舎は家畜の種類別に飼育目的に応じた構造を備えているが、一般に環境性、作業性、経済性、安全性および社会性の諸要件を満たす必要がある。畜産経営は家畜の生産性に依存するので、できるだけ各家畜に適した環境を備え、自然災害や危険から家畜を守ってその安全性を確保し、家畜の排出物の処理や騒音防止に留意して周辺環境への悪影響を防止した畜舎が望ましい。また、これらの諸管理が効率よくできる作業性を重視した構造と施設の配置がなされたものでなければならない。しかし、以上の諸要件を満たすためには多大な建設費を投資することになり、利益の低下を招くので、一般には家畜の生産性に大きな影響を及ぼさない許容範囲内(生産環境限界)で、経済性を考慮した畜舎が建てられる。具体的には暑熱、寒冷および有害物から家畜を守るために、日射制御、通風と遮風、換気、除塵(じょじん)と消毒に留意する。家畜の種類別に牛舎、豚舎、鶏舎などがあり、種別目的に応じて、さらに細分化する。
牛舎は、品種、性別、発育段階および生産目的により、乳牛舎、肉牛舎、種雄牛舎、哺育(ほいく)・育成牛舎、搾乳牛舎、繁殖牛舎に区別され、それぞれ独立に建てる場合と、2種以上を一棟にまとめる場合とがある。その収容方式により、つなぎ飼い式、小さい囲いに放つ牛房式(追い込み式)、広い囲いに放す放し飼い式(解放式)牛舎の別がある。搾乳牛舎はスタンチョンストールとよばれる首かせを用いたつなぎ飼い方式が一般的で、肉牛は追い込み方式で飼われる。
豚舎は、目的によって肥育豚舎、繁殖豚舎、繁殖・肥育豚舎に分けられ、繁殖豚舎は分娩(ぶんべん)豚舎、繁殖雄(おす)豚舎、繁殖雌(めす)豚舎に細分される。また収容方式によって豚房式とケージ式に分けられる。ブタでは多頭飼育の糞尿(ふんにょう)処理が問題になるので、ケージの床の構造、排糞場所の設定にもくふうがなされている。
鶏舎には平面飼育鶏舎と立体飼育鶏舎があり、収容するニワトリの成長段階や飼育目的により育雛(いくすう)舎、採卵鶏舎、ブロイラー舎、種鶏舎に区分される。現在は、採卵鶏は多くがケージ飼育で、ブロイラーは平飼い(広い空間に放し飼いにする)飼育である。採卵用、ブロイラー用ともに壁面構造によって開放式と無窓式の区別がある。いずれにおいても照明時間が人工的に完全に制御できる。給餌(きゅうじ)、給水、集糞も自動化され、1人で管理する羽数も多く生産効率が高い。