行政手続を原則として電子申請に統一すると定めた法律。正式名称は「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(平成14年法律第151号)。デジタル行政推進法、デジタル行政手続法、デジタルファースト法ともよばれる。本法は2019年(令和1)、行政手続オンライン化法(正式名称「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」)の改正により名称が変更された。関連するマイナンバー法(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」平成25年法律第27号)、公的個人認証法(正式名称「電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律」平成14年法律第153号)、住民基本台帳法、健康保険法なども一括改正し、2019年度から順次施行されてきた。デジタル手続法は、①行政手続をデジタル処理で完結するデジタルファースト、②一度出した情報の再提出は求めないワンスオンリー、③複数の手続を一度で済ますワンストップ、の3原則のもと、国民の利便性向上、行政の効率化、海外に負けない平易・簡素なビジネス手続の確立につなげるねらいがある。所管官庁はデジタル庁で、デジタル技術の急速な進展にあわせ、頻繁に改正されている。デジタル手続法によって、インターネットの専用サイトで転出・転入届を出せば、電気、ガス、水道の契約や、銀行口座の住所変更も一括ででき、死亡・相続手続(2026年度末予定)もネットで完結できるようになった。健康保険証や運転免許証などのかわりにマイナンバーカードを使用できるように機能を拡充し、デジタル手続法の基盤であるマイナンバーカードの普及を促す。デジタル規制改革推進の一環として、人手や紙に頼るアナログ的行政手続から脱却し、デジタル技術の行政手続への活用を促すため、テクノロジーマップ(技術マップ)の作成・公表を国の責務と規定(2023年6月改正)。また、商業登記などの法人関係のネット手続を可能とし、各種書類の添付を撤廃し、税、年金、営業許可などの複数の行政窓口への手続を一度で済ませられるよう改善した(2024年5月改正、施行は2025年8月予定)。国と地方自治体ごとにばらばらの税・社会保障システム基盤を共通化する「ガバメントクラウド(政府クラウド)」を整備・活用するため、国・地方自治体と民間事業者の一括契約・払込みを可能とし、国にはガバメントクラウドの活用を最優先で検討するよう義務づけた(地方自治体は努力義務、2024年12月改正、施行は2025年3月)。
欧米では税や社会保障手続の多くがデジタル化されているが、日本では、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行時に、特別定額給付金(国民1人10万円)のオンライン手続を断念する地方自治体が続出するなど、遅れが際だっていた。このため政府はデジタル手続法や「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)などに沿って、2025年度末までに国の行政手続の97%超のオンライン化や、地方の行政手続のガバメントクラウドへの円滑な移行方針を掲げた。しかし、オンライン化にまにあわない政令指定都市などの自治体が続出し、国は期限の延期を容認した。