原則として1歳未満の子どもを養育する労働者が、育児休業を取得した場合に支給される給付金。育児・介護休業法(正式名称「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」平成3年法律第76号)と雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、1995年(平成7)に導入された。出産した女性労働者が仕事を継続できるように保証し、男性の育児参加を促し、子育て世帯の育児休業中の収入減を補う目的がある。給付金は雇用保険から支払われる。対象は雇用保険に加入し育児休業取得後に職場に復帰する予定の労働者で、育児休業に入る前の2年間に、11日以上勤務した月が12か月以上ある、または就業時間が80時間以上の月が12か月以上あることが条件である。女性労働者は産後休業(出産後8週間)終了後から、男性労働者は子どもの出生日からそれぞれ支給が始まり、子どもが1歳になる前日(具体的には1歳の誕生日の前々日。民法においては誕生日の前日をもって満年齢に達したとみなされるため。職場復帰の場合は復帰日の前日)まで支給される。また、子どもが保育所に入れないときなどは、最長で子どもが1歳6か月または2歳になる前日まで支給される。両親がともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2か月になる前日までの間で最長1年間支給される。少子化・人口減少対策や女性の労働力率向上のため、給付金額は徐々に引き上げられ、条件付きながら支給期間も延長される傾向にある。
給付金額は制度発足当初は1か月当り、原則「休業開始時賃金日額(育児休業開始前6か月の賃金÷180)×支給日数の25%」であったが、徐々に引き上げられ、2014年度(平成26)から「休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)」となった。2025年度(令和7)からは、出産後に両親ともに14日以上育児休業を取得した場合、最大28日間、育児休業給付金に「休業開始時賃金日額×支給日数の13%」が上乗せ支給される(出生後休業支援給付金)。また、2歳未満の子どもの育児を理由に短時間勤務(時短勤務)を選んだ場合、勤務中の賃金額の10%が上乗せ支給される(育児時短就業給付金)。ただし、時短勤務中の賃金と上乗せ支給額の合計は、時短勤務前の賃金を超えない。なお、賃金月額(休業開始時賃金日額×30日)には上限と下限が設けられている(毎年8月に改定されることがある)。2024年8月時点の賃金月額の上限は47万0700円(支給額上限は最初の6か月間が月31万5369円、その後月23万5350円)、下限は8万6070円。給付金は非課税で、所得税、復興特別所得税がかからず、次年度の住民税を決めるうえでの所得に算定されない。おもに育児休業をとっている女性の復職につなげるため、2014年10月以降、月80時間までの就業にも育児休業給付金が支払われるよう給付条件が緩和され、「1日3~4時間勤務で20日就労」といった柔軟な勤務が可能になった。
給付金は原則、労働者の雇用主が公共職業安定所に給付申請する。育児休業給付金が支払われないなどの不利益を被った場合、都道府県労働局や公共職業安定所が相談窓口となる。