硬骨魚綱キンメダイ目カンムリキンメダイ亜目クジラウオ上科アンコウイワシ科の海水魚。北海道から駿河(するが)湾の太平洋沖、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、九州・パラオ海嶺(かいれい)、グリーンランド海域、スリナム海域など太平洋、インド洋、大西洋の広範囲に分布する。体は楕円(だえん)形で側扁(そくへん)し、胸部付近でもっとも高い。体長は体高の2.5~2.6倍。尾柄(びへい)は低くて、その高さは体高のおよそ5分の1よりすこし高い。頭はきわめて大きく、体長の半分よりすこし長い。頭の背面はくぼむ。眼上部に大きい骨質の隆起が張り出す。後側頭部に大きい骨質の隆起があり、後方へ伸びる。吻(ふん)は長く、眼径のおよそ6倍。目は小さく頭の中央部よりもやや前方にある。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下付近に達するが、そこを越えない。上下両顎の歯は微小で歯帯を形成する。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に歯がない。鰓耙(さいは)は細長くて、後縁に多数の小さい棘(きょく)がある。鰓耙数は上枝に6本、下枝に15本。体の皮膚は滑らかで、鱗(うろこ)がない。側線は管状ではなく、乳頭状の突起が鰓孔の上端近くから尾びれ基底(付け根の部分)まで並び、それぞれは上下に列状に伸びる。すべてのひれに棘がない。背びれは13~16軟条、臀(しり)びれは13~15軟条で、体の後部に上下対(つい)をなして位置する。胸びれは9~11軟条で、体のほぼ中央部の腹部の側面に、腹びれは5~6軟条で、肛門(こうもん)のすこし前方にある。体は暗赤色で、肩帯部は赤みが強い。各ひれは赤みを帯びる。水深750~1500メートルに生息し、きわめてまれにとれる。最大体長は約10センチメートル。和名は肩帯部が赤いのでチョッキ(ベスト)を着ているように見えることに由来する。
本種を含むクジラウオ上科のアンコウイワシ科は頭が非常に大きく、鱗がなく、管状の側線がないことなどで、同じ上科のクジラウオ科およびアカクジラウオダマシ科と容易に区別できる。