硬骨魚綱キンメダイ目カンムリキンメダイ亜目クジラウオ上科クジラウオ科の海水魚。千島(ちしま)列島周辺海域、沖縄諸島近海、南シナ海など西太平洋に分布する。ソコクジラウオはクジラウオ科の種の雄に対してつけられた和名である。この種の雌は既知種のなかにいるのか、あるいは別種なのかは不明である。体は細長く、高さは背びれと臀(しり)びれの前方までほとんど変わらない。体高は頭長のおよそ半分。吻(ふん)は丸くて短く、目は著しく小さい。鼻孔(びこう)は目の上縁の前にあり、きわめて大きい。口は小さく、水平またはいくぶん斜めに開き、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁を越えない。体に鱗(うろこ)がある。すべてのひれは軟条からなる。背びれと臀びれはおよそ同形で、基底長(付け根の部分の長さ)が短く、体の後部に上下対(つい)をなして位置する。背びれは16~18軟条で、臀びれは17~18軟条。胸びれは19~21軟条で、小さく、体の側面につく。腹びれはない。肛門(こうもん)は臀びれの起部のすこし前方に位置する。水深約2000メートルの漸深層にすむ。体長は約5センチメートル。
ソコクジラウオは、以前はソコクジラウオ科の種として取り扱われてきた。しかし、魚類研究者のパクストンJohn Richard Paxton(1938―2023)はソコクジラウオ科の標本には雄しかいないことを指摘した(1999)。その後、ジョンソンG. David Johnson(1945―2024)らがソコクジラウオ科の種のミトコンドリアDNAと形態を、近縁のトクビレイワシ科およびクジラウオ科の種のものと比較検討した結果、これら3科はすべて同じ科に属し、ソコクジラウオ科の種は雄で、クジラウオ科の種は雌、そしてトクビレイワシ科の種は仔魚(しぎょ)や未成魚に相当することが判明した(2009)。これにより、ソコクジラウオ科はクジラウオ科にされたが、それぞれの種の雌雄と親子の関係は明らかになっていない。これらが解明されるまでは、ソコクジラウオはクジラウオ科の一種の雄として取り扱われている。