硬骨魚綱キンメダイ目カンムリキンメダイ亜目クジラウオ上科クジラウオ科の海水魚。高知県沖の島付近、宮崎県都井岬(といみさき)沖、屋久島近海、小笠原(おがさわら)諸島海域、ニューギニア島海域、アフリカ西岸など太平洋、インド洋、大西洋からとれている。リボンイワシはクジラウオ科の種の仔魚(しぎょ)で、成魚は不明。体は細長く伸長し、前方では円筒形に近く、後方では側扁(そくへん)する。体長は体高の10倍以上。頭の背縁はすこしくぼむ。吻(ふん)は短い。目は著しく小さい。口は小さく上向きに開き、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下付近に達する。体に鱗(うろこ)はないが、微細な突起で密に覆われている。すべてのひれは軟条からなる。背びれと臀(しり)びれはおよそ同形で、基底長(付け根の部分の長さ)が短く、体の後部に上下対(つい)をなして位置する。背びれは16~20軟条、臀びれは15~20軟条。体長3~5センチメートルくらいの仔魚は尾びれがリボン状に伸長し、その長さは体長のおよそ15倍。体長およそ5センチメートルを越えると尾びれは短くなる。胸びれは短くて丸い団扇(うちわ)状で、体の側面につき、20~24軟条。腹びれは4~5軟条で、胸びれ基底よりも前方の喉位(こうい)(のどの位置)にあり、糸状にすこし伸長する。肛門(こうもん)は臀びれの起部よりもすこし前方に位置する。体は暗褐色で、腹面は暗色。尾びれは背側面では黄色、腹側面では黒色。普通は外洋の表層域にすみ、海産のミジンコ類を食べる。ダイバーにより、高知県沖の島の水深20メートルの岩礁とサンゴ礁からなる水域で、長い尾びれを新体操のリボンのようにゆっくりと動かして遊泳しているリボンイワシが観察された。写真撮影と捕獲に成功し、標本にされた個体の体長は5.6センチメートル、全長は81.6センチメートル(捕獲時に尾びれが失われたので写真から復原)であった。また、2023年(令和5)に沼津(ぬまづ)市沖で遊泳中のリボンイワシが観察されている。和名のリボンイワシは英名のribbonfish(リボン魚)に由来するが、tapetail fish(テープの尾)、streamer(吹き流し)などの別名もある。
本種はリボンイワシ科あるいはトクビレイワシ科内のリボンイワシ亜科の種として取り扱われ、クジラウオ科やソコクジラウオ科にもっとも近縁であるとされてきた。しかし魚類研究者のパクストンJohn Richard Paxton(1938―2023)はトクビレイワシ科の標本はすべて仔魚や未成熟魚であり、クジラウオ科の標本は雌ばかりで、そしてソコクジラウオ科の標本には雄しかいないことを指摘した(1999)。その後、宮正樹(みやまさき)(1959― )らはそれぞれの種のミトコンドリアDNAを分析し、クジラウオ科の一種とトクビレイワシ科の一種の塩基配列に大差がないことを明らかにした(2003)。またジョンソンG. David Johnson(1945―2024)らはトクビレイワシ科、クジラウオ科およびソコクジラウオ科の各種のミトコンドリアDNAと形態を比較検討した結果、これら3科はすべて同じ科に属し、トクビレイワシ科の種は未成魚、クジラウオ科の種は雌、そしてソコクジラウオ科の種は雄に相当することが判明した(2009)。しかしそれぞれの親子と雌雄の関係は明らかになっていない。これらが解明されるまでリボンイワシはクジラウオ科の種の仔魚として取り扱われている。