1. こよ‐な・し
日本国語大辞典
語〔1001~14頃〕竹河「おもりかに心深きけはひはまさり給へれど、にほひやかなるけはひは、こよなしとぞ人思へる」(3)後世、連用形、連体形が文章語として「この
2. こよ-な・し
全文全訳古語辞典
〔形容詞ク活用〕 ❶他とくらべて相違がはなはだしい。格段の差がある。 「まみのほど、髪の美しげにそがれたる末も、なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな、と
3. 葵(源氏物語) 20ページ
日本古典文学全集
儀式など、常の神事なれど、いかめしうののしる。祭のほど、限りある公事に添ふこと多く、見どころこよなし。人からと見えたり。御禊の日、上達部など数定まりて仕うまつり
4. 朝顔(源氏物語) 474ページ
日本古典文学全集
神やいさめむとあれば、源氏「あな心憂。その世の罪はみな科戸の風にたぐへてき」とのたまふ愛敬もこよなし。宣旨「禊を神はいかがはべりけん」など、はかなきことを聞こゆ
5. 排蘆小船(近世随想集) 336ページ
日本古典文学全集
『石上私淑言』一「深きあはれはただの詞にいひてはあきたらず。同じ一言も、長くあやをなしていへば、心はるる事こよなし。ただの詞にては、いかほど長くこまごまといひて
6. 浮舟(源氏物語) 122ページ
日本古典文学全集
いとよくも似通ひたるけはひかな、と思ひくらぶるに、心恥づかしげにてあてなるところは、かれはいとこよなし、これは、ただ、らうたげにこまかなるところぞいとをかしき。
7. 浮舟(源氏物語) 132ページ
日本古典文学全集
恋に盲いた匂宮の心に即した叙述を翻し、その主観的偏向を読者に気づかせる筆づかい。夕霧の六の君。匂宮の正室。「こよなし」は、段違い、の意で、よいほうにもわるいほう
8. 栄花物語 54ページ
日本古典文学全集
えつけて下りたまひぬ。あさましうあはれなる世の有様なりかし。おはするほどなど、さきざきよりはこよなしなど、人褒めきこゆるさへあはれなり。〔一一〕三条帝女二の宮と
9. 栄花物語 127ページ
日本古典文学全集
〔二九〕延子、顕光の嘆き 高松殿におはしましたれば、たとしへなきことども多かり。こたみの絶え間いとこよなし。女御今はただ、この嘆きは、わが身のなからんのみぞ絶ゆ
10. 栄花物語 35ページ
日本古典文学全集
男君達などあまたもちたまへり。北の方ぞいみじう思すべけれど、少将の君持たまへり。かやうなれば慰めこよなし。この大納言は、この御なかどもに、さきざきいとあまた失ひ
11. 栄花物語 292ページ
日本古典文学全集
て、東宮に参らせたまふべし。内にと、故院は申させたまひしかども、后もあまたおはします、御年もこよなしなど思しめすなるべし。〔九〕高陽院へ行幸 十月に、院に行幸あ
12. 江戸近郊道しるべ 48ページ
東洋文庫
いと神さびたてり、木の間よりみれば、西南のかた田の面をへだて』、向ひの山の木だち見わたさる、ながめ又こよなし、昔はこゝに花ありしにや、春は遊覧の人東叡山にひとし
13. 江戸近郊道しるべ 331ページ
東洋文庫
川の岸に山吹さきたり たちかへりみれどあかぬかも行水の心にとまる岸の山吹 行ての道にまれに花あるもこよなし さはにみるながめはあれどかなたこなた一木
14. おり‐もの【織物】
日本国語大辞典
終〕三〇一・織物は「おり物は、むらさき。もえぎにかしは織りたる。紅梅もよけれども、なほ見ざめこよなし」*紫式部日記〔1010頃か〕寛弘五年九月一一日「をり物は限
15. 国譲 上(うつほ物語) 53ページ
日本古典文学全集
直衣姿にてまうでたまへり。例の、簀子に褥参りたまへり。居たまへるを見れば、見えたまへる人にいとこよなし。藤壺、なほこれは、こよなくもはた、と見たまふ。大将、仲忠
16. 国譲 下(うつほ物語) 330ページ
日本古典文学全集
みな死ななむ。つひに思ふことせむ、など思して、朱雀院に出でたまひぬ。女御憎しと思すこと、むかしよりこよなし。いかで憎み立てて、院の内にも候はせじと思せど、近きお
17. 蔵開 上(うつほ物語) 359ページ
日本古典文学全集
とぎてみなまもりたまふ。さらに難なき帝の御婿なり。源中納言なずらひたり、といひしかど、今はいとこよなし。中納言、式部卿の宮に御かはらけ参りたまふ。宮、闕巡三度ま
18. くり‐めし【栗飯】
日本国語大辞典
*赤光〔1913〕〈斎藤茂吉〉郊外の半日「いとまなきわれ郊外にゆふぐれて栗飯食(を)せば悲し
こよなし」[発音]
[0]
19. こと‐な・い【殊─】
日本国語大辞典
ことな・し〔形ク〕(「ない」は接尾語)この上ない。格別である。殊のほかだ。
こよなし。*寛和二年皇太后詮子
麦合〔
20. このうえ 無(な)い
日本国語大辞典
これよりまさるものはない。これ以上のことはない。最上である。こよなし。*詞葉新雅〔1792〕「コノウエモナウ こよなくかみなき」*滑稽本・浮世床〔1813~23
21. こよ‐な
日本国語大辞典
(形容詞「こよなし」の語幹)格別であること。感動表現に用いる。*落窪物語〔10C後〕四「同じ程の殿にだに、御心よからん方にこそ仕うまつらめ。いはんやさらにこよな
22. こよ‐なく
日本国語大辞典
(形容詞「
こよなし」の連用形。現在では、副詞的に用いられる)
こよなし(3)。[発音]
23. こよな‐げ
日本国語大辞典
〔形動〕(形容詞「こよなし」の語幹に接尾語「げ」の付いたもの)格別であるさま。*栄花物語〔1028~92頃〕浦々の別「されど御心ざしの有様こよなげ也」
24. こよな‐さ
日本国語大辞典
〔名〕(形容詞「こよなし」の語幹に接尾語「さ」の付いたもの)格別であること。また、その度合。*枕草子〔10C終〕一八六・位こそ猶めでたき物はあれ「中納言、大納言
25. 今昔物語集 407ページ
日本古典文学全集
鳥ノ痛ク騒グハ。男共起テ調度負ヘ。 →三九六ページ注一〇。この上なく、はなはだしくの意。「こよなし」は仮名文学系の語。当てるべき漢字を見いだせず仮名書きしたも
26. 賢木(源氏物語) 139ページ
日本古典文学全集
人柄めやすく世に用ゐられて、心地よげにものしたまひしを、こよなうしづまりて、三位中将なども、世を思ひ沈めるさまこよなし。かの四の君をも、なほ離れ離れにうち通ひつ
27. 嵯峨の院(うつほ物語) 358ページ
日本古典文学全集
わが妻の出で来む」と思っていた。→三五五ページ。あて宮。「思ひ寄り」は、それと気づくこと。形容詞「こよなし」は、比べものにならないほど違っている、という意で、優
28. 狭衣物語 112ページ
日本古典文学全集
何事かは、なのめにいでやとおぼゆることのありしと、思ひ出でたまふも、さは言へど、け近きほどのあはれはこよなし。述べどころ多かるにや、涙もこぼれぬるを、見咎むる人
29. 狭衣物語 145ページ
日本古典文学全集
、本院造り磨かせたまふ。大宮のわたり、賤の垣根まで、心ことに思ひ設けて、用意加へたるは、げにこよなし。今年の祭は、今よりさまことに、世の中ゆすりて思ひ営む。随身
30. 狭衣物語 150ページ
日本古典文学全集
と、思ひやるべし。御車は唐のが、例よりも小さく、めづらしう、うつくしきさまにこよなし。大将、殿、御几帳の左右に立ちたまへるに、つくろひ、乗せたてまつりたまふにも
31. 狭衣物語 322ページ
日本古典文学全集
つゆばかり心に物しう思はんことを、言ふべきならず、など思せば、ただ少し、もの思し慰め 〔三一六〕 「人目こよなし」で、見るからに問題がある状態。出家するにして
32. 椎本(源氏物語) 198ページ
日本古典文学全集
いくのである。大君を。弁が、大君のとんでもない代役として。大君との交替を揶揄する表現。この「こよなし」は、まったく困った、ぐらいの意。「昔」は、柏木と女三の宮と
33. しずま・る[しづまる]【鎮・静】
日本国語大辞典
世に用ゐられて心地よげにものし給ひしを、こよなうしづまりて、三位中将なども世を思しつめるさまこよなし」*源氏物語〔1001~14頃〕野分「そこら所せかりし御いき
34. しなと の 風(かぜ)
日本国語大辞典
01~14頃〕朝顔「あな心憂。その世のつみは、みな、しなとの風にたぐへてきとのたまふ愛敬も、こよなし」*御伽草子・福富長者物語〔室町末〕「不思議や、いかうくさき
35. 科戸の風
故事俗信ことわざ大辞典
01~14頃)朝顔「あな心憂。その世のつみは、みな、しなとの風にたぐへてきとのたまふ愛敬も、こよなし」御伽草子・福富長者物語(室町末)「不思議や、いかうくさきが
36. たいへんよい(わるい)【大変良い(悪い)】[現古辞典]
全文全訳古語辞典
甚(いた)し/いとどし/いみじ/こよなし/無下(むげ)/あさまし(=あきれるほど良い(悪い))
37. 竹河(源氏物語) 76ページ
日本古典文学全集
深きけはひはまさりたまへれど、にほひやかなるけはひはこよなしとぞ人思へる。碁打ちたまふとて、さし向かひたまへる髪ざし、御髪のかかりたるさまども、いと見どころあり
38. ちり 居(い)る
日本国語大辞典
枕草子〔10C終〕二一九・硯きたなげに塵ばみ「置き口のはざめにちりゐなど、うち捨てたるさまにこよなしかし」*伊勢集〔11C後〕「なごりなく磨かれにける白玉は払ふ
39. つちみかどてんのうりょう【土御門天皇陵】京都府:長岡京市/金ヶ原村
日本歴史地名大系
翌年の十三回忌にも「金原にて御八講あるへけれは、承明門院も、かねてより渡らせ給ふ、上達部殿上人参りつとふさまこよなし」と「増鏡」にあって、同様法華八講が行われた
40. 俊蔭(うつほ物語) 99ページ
日本古典文学全集
まったく捨ててかえりみないこと。ここは兼雅のいったことをまったく無視して答えないのも、の意。「こよなし」は格段の、ずっと、の意。「ほど」は時間を表す。ずっと以前
41. とりかへばや物語 339ページ
日本古典文学全集
きなかるべき心地して、見知らぬ顔なれど、心のうちには、我をまたなく思はんだにありし有様にてはこよなしかし、ましてかくのみ心を分けられては何にかはせん、などぞ思へ
42. なずら・う[なずらふ]【準・准・擬】
日本国語大辞典
9頃〕蔵開上「さらに難無き帝(みかど)の御聟なり、源中納言なずらひたりといひしかど、今はいとこよなし」*源氏物語〔1001~14頃〕常夏「まことに弾(ひ)きうる
43. にくみ‐た・てる【憎立】
日本国語大辞典
下二〕ひどく憎む。憎みとおす。*宇津保物語〔970~999頃〕国譲下「にくしとおぼす事昔よりこよなし。いかでにくみたてて、院の内にも侍はせじとおぼせど」*四河入
44. 匂兵部卿(源氏物語) 17ページ
日本古典文学全集
格段に現実性が濃い点に注意。「源氏の御すゑなどゝ人の思ふ故に、源の幼少の御時よりは人のおぼえこよなしと也。是も源氏の御威光故と也」(細流抄)。若いころの源氏は母
45. 俳諧集 330ページ
日本古典文学全集
之詞)。亡き後。「跡」は「後」に通用。雑。ひどく憎む。憎みとおす。「にくしとおぼす事、昔よりこよなし。いかでにくみたてて、院の内にも侍はせじとおぼせど」(宇津保
46. はざ‐め【挟目・挟間】
日本国語大辞典
*能因本枕草子〔10C終〕二一九・硯きたなげに塵ばみ「置き口のはさめに塵ゐなどうちすてたるさまに、こよなしかし」【二】〔接尾〕「はざみ」に同じ。*宗五大草紙〔1
47. はなはだしい[現古辞典]
全文全訳古語辞典
甚(いた)し/いみじ/夥(おびた)たし/こよなし/こちたし/ゆゆし/おどろおどろし
48. ばつ‐ぐん【抜群】
日本国語大辞典
〔1792〕「バ
クンチガウ
こよなし」[発音]バツ
ン
49. 蛍(源氏物語) 215ページ
日本古典文学全集
は、をかしとにはあらねど、かかること世にはありけりと見馴れたまはむぞゆゆしきや」とのたまふもこよなしと、対の御方聞きたまはば、心おきたまひつべくなむ。上、「心浅
50. 枕草子 230ページ
日本古典文学全集
女に面と向っては言わないが、第三者にははばからず言うというのか。自分の悪口を男が別の女に言っていること。「こよなし」は他とくらべて格段に違っているの意。この一文