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  11. こよなし

こよなし

ジャパンナレッジで閲覧できる『こよなし』の全文全訳古語辞典・日本国語大辞典のサンプルページ

小学館 全文全訳古語辞典

こよ-な・し
最重要語

〔形容詞ク活用〕

❶他とくらべて相違がはなはだしい。格段の差がある。

「まみのほど、髪の美しげにそがれたる末も、なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな、とあはれに見給ふ」〈源氏・若紫〉

(尼君の)目もとの辺りや、髪が美しい感じに切りそろえられている先端も、かえって(世間の女性の)長いのよりも格段と現代風だなあ、と(光源氏は)しみじみとご覧になる。

普通よりはなはだしい。格別である。

「おのづから御心移ろひて、こよなう(おぼ)し慰むやうなるも」〈源氏・桐壷〉

(帝は藤壷(ふじつぼ)に)自然とお心が移ってゆき、(桐壷更衣(きりつぼのこうい)の死の悲しみが)すっかりお紛れになる様子であるのも。

❸格段と優れている。

「人にもてかしづかれて、隠るること多く、自然(じねん)にその気配(けはひ)こよなかるべし」〈源氏・帚木〉

(高貴な姫は周囲の)人に大切にされるので、(欠点が)隠れることも多く、自然とその様子は特別立派に見えるであろう。


要点

  • 基本的には、他と比較して隔たりが大きい意で、比較の基準が❶の例のように「より」で示される以外に、「に」で示されることや、言外に示されることもある。❷も普通の場合を比較の基準とするのである。❸のように、優れている場合に多く用いるが、劣っている場合に用いることもある。現代では、「こよなく」の形が副詞として文章語に残る。


日本国語大辞典

こよ‐な・し

解説・用例

〔形ク〕

他とくらべて、はるかにへだたりのあるさまを表わす語。善悪いずれにもいう。

(1)他とくらべて違いがはなはだしい。格別に違う。格段の差がある。

(イ)比較の基準が示される場合。

*宇津保物語〔970~999頃〕蔵開中「それはとしは、われにこよなくこのかみにぞおはせし」

*源氏物語〔1001~14頃〕若紫「髪のうつくしげにそがれたる末も、なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかなと、あはれに見給ふ」

*今昔物語集〔1120頃か〕二五・五「維茂が方には兵三千人計り有り、諸任が方には千余人有ければ、軍の員もこよなく劣たり」

(ロ)比較の基準が言外に示される場合。

*中務集〔989頃〕「こよなくてけふはすずしきたもとよりあふぐかぜさへ秋になりつつ」

*源氏物語〔1001~14頃〕若菜上「中納言などは、年若くかろがろしきやうなれど、〈略〉遂におほやけの御後見ともなりぬべき生先なんめれば、さもおぼし寄らむになどかこよなからむ」

*苔の衣〔1271頃〕四「大殿は、大将のいまはよのかためなどし給はんもこよなかるまじきほどに成り給ひたればいと心やすく覚して」

*徒然草〔1331頃〕七「かげろふの夕を待ち、夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし。つくづくと一年をくらすほどだにもこよなうのどけしや」

(ハ)比較の基準が通常の状態である場合。通常の場合に比べて格段に違う。

*源氏物語〔1001~14頃〕桐壺「おぼしまぎるとはなけれど、おのづから御心うつろひて、こよなうおぼしなぐさむやうなるも、あはれなるわざなりけり」

(2)前後の関係から、「すぐれている」とか「劣っている」とかの意が付加された場合。

(イ)格段にすぐれている。

*落窪物語〔10C後〕四「母北の方見るに、帥はいと物ものしく、有りさまもよければ、さいへども、やんごとなき人のし給へることは、こよなかりけりとよろこぶ」

*源氏物語〔1001~14頃〕東屋「こよなき人の御けはひを、あはれ、こは何人ぞ、〈略〉と思ふに」

*増鏡〔1368~76頃〕八・あすか川「経任の中納言にはこよなき心ばへにや」

(ロ)格段に劣っている。

*宇津保物語〔970~999頃〕嵯峨院「限りなくめでたく見えし君だち、此の今見ゆるにあはすれば、こよなく見ゆ」

*源氏物語〔1001~14頃〕竹河「おもりかに心深きけはひはまさり給へれど、にほひやかなるけはひは、こよなしとぞ人思へる」

(3)後世、連用形、連体形が文章語として「この上ない」の意に用いられる。

*暴夜物語〔1875〕〈永峰秀樹訳〉発端「国人の為無上(コヨナキ)功徳に候はずやと思ひ詰て」

*狐の裁判〔1884〕〈井上勤訳〉六「今に此上(コヨ)なき幸福の大王の御身に集る事を」

*名張少女〔1905〕〈田山花袋〉二「美しい山川の光景は此の塵の世の此上(コヨ)ない慰藉だと申して」

*おあんさま〔1965〕〈大原富枝〉「そのころたよは兄をこよなく頼みに思っていた。父は、これは別格にえらい人であった」

補注

語源に関しては「これ(是)より(従)無し」「こよ(越)無し」「このよ(此世)無し」などの説がある。

発音

〓[ヨ][ナ]

辞書

書言・ヘボン・言海

正式名称と詳細

表記

事外〓閑雅書言

無此上ヘボン


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1. こよ‐な・し
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2. こよ-な・し
全文全訳古語辞典
〔形容詞ク活用〕 ❶他とくらべて相違がはなはだしい。格段の差がある。 「まみのほど、髪の美しげにそがれたる末も、なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな、と
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20. このうえ 無(な)い
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21. こよ‐な
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22. こよ‐なく
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23. こよな‐げ
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〔形動〕(形容詞「こよなし」の語幹に接尾語「げ」の付いたもの)格別であるさま。*栄花物語〔1028~92頃〕浦々の別「されど御心ざしの有様こよなげ也」
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01~14頃)朝顔「あな心憂。その世のつみは、みな、しなとの風にたぐへてきとのたまふ愛敬も、こよなし」御伽草子・福富長者物語(室町末)「不思議や、いかうくさきが
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38. ちり 居(い)る
日本国語大辞典
枕草子〔10C終〕二一九・硯きたなげに塵ばみ「置き口のはざめにちりゐなど、うち捨てたるさまにこよなしかし」*伊勢集〔11C後〕「なごりなく磨かれにける白玉は払ふ
39. つちみかどてんのうりょう【土御門天皇陵】京都府:長岡京市/金ヶ原村
日本歴史地名大系
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41. とりかへばや物語 339ページ
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日本国語大辞典
9頃〕蔵開上「さらに難無き帝(みかど)の御聟なり、源中納言なずらひたりといひしかど、今はいとこよなし」*源氏物語〔1001~14頃〕常夏「まことに弾(ひ)きうる
43. にくみ‐た・てる【憎立】
日本国語大辞典
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44. 匂兵部卿(源氏物語) 17ページ
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45. 俳諧集 330ページ
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46. はざ‐め【挟目・挟間】
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*能因本枕草子〔10C終〕二一九・硯きたなげに塵ばみ「置き口のはさめに塵ゐなどうちすてたるさまに、こよなしかし」【二】〔接尾〕「はざみ」に同じ。*宗五大草紙〔1
47. はなはだしい[現古辞典]
全文全訳古語辞典
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48. ばつ‐ぐん【抜群】
日本国語大辞典
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49. 蛍(源氏物語) 215ページ
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は、をかしとにはあらねど、かかること世にはありけりと見馴れたまはむぞゆゆしきや」とのたまふもこよなしと、対の御方聞きたまはば、心おきたまひつべくなむ。上、「心浅
50. 枕草子 230ページ
日本古典文学全集
女に面と向っては言わないが、第三者にははばからず言うというのか。自分の悪口を男が別の女に言っていること。「こよなし」は他とくらべて格段に違っているの意。この一文
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