美術史入門136 / 301
文庫クセジュ821
グザヴィエ・バラル・イ・アルテ著
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吉岡 健二郎訳
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上村 博訳
芸術・趣味
付録 原典による美術史入門
I 思想のさまざまな流れ
ジョルジョ・ヴァザーリ(一五一一~一五七四年)。イタリアの建築家にして画家、大のミケランジェロ崇拝者。ヴァザーリとともに近代の美術史は始まる。彼の『最も卓越した画家、彫刻家、建築家の伝記』は一五五〇年にローマで出版され、一五六八年に増補された。この書物のなかでも、ウルビーノのラファエッロについての伝記は、ミケランジェロのそれについで長い。
彼は次のことが大切だと思った。戦いの場面においては軍馬の逃走や兵士たちの勇気を示すことができること、すべての種類の動物をよく表現しうること、またなかんづく肖像をよく似せて描き、そこに生きたモデルを彷彿とさせるような能力を身につけること。また彼は絵画芸術に必要なすべてを学んだ。布、靴、兜、鎧、女性のかぶりもの、髪、髭、壺、樹木、洞窟、岩、炎、荒れた空や静かな空、雲、雨、稲妻、晴天、夜、月光、太陽の効果、などなど。
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