硬骨魚綱ヒメ目エソ科に属する海水魚。山陰地方から九州西岸の日本海と東シナ海、三重県尾鷲(おわせ)市付近から日向灘(ひゅうがなだ)の太平洋沿岸、台湾の海域に分布する。体は細長く、円筒形。尾柄(びへい)部はやや側扁(そくへん)し、幅より尾柄高のほうが大きい。口は大きく、目の後縁をはるかに越えて後方に伸びる。上下両顎(りょうがく)には数列の鋭い歯があり、いずれも内側に倒すことができる。口蓋(こうがい)部の左右各側に2列からなる歯帯があり、外側のものは2列で、前部の歯はほかのものより長く、内側の歯帯は中央部で4~6列になる。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)には左右各側に1~8本の小さい円錐歯(えんすいし)がある。左右どちらかの円錐歯が1本もない個体もいるが、左右ともにないということはない。舌上に3~5列の歯がある。鱗(うろこ)は円鱗(えんりん)ではがれやすく、尾柄部の側線鱗は隆起しない。側線鱗数は49~52枚。脊椎骨(せきついこつ)数は48~50個。背びれ起部は吻端(ふんたん)より脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)起部に近い。背びれは10~13軟条、臀(しり)びれは10~11軟条。胸びれの後縁はわずかにくぼみ、その後端は腹びれ起部に達する。体は背面では暗褐色、側線の下方では銀白色で、腹部は暗色。側線上、および側線の上方と下方にそれぞれ暗色斑(はん)が並ぶが、体長20センチメートル以上の個体では不明瞭(ふめいりょう)になる。側線より下方の腹部のすべての鱗に黒色素胞(こくしきそほう)がある。背びれは先端部が暗色で、第1軟条と第2軟条の縁辺に暗色点が1列に並ぶが、個体によっては一様に暗色。脂びれは暗色。胸びれの上3分の2は黒く、腹びれと臀びれは淡色。尾びれの上葉は後部ではわずかに暗色で、上縁に2~8個の鮮明な黒色の斑点がある。下葉は後部では暗色で、縁辺は白色から淡暗色。水深80~250メートルの大陸棚の砂泥底にすみ、魚類、イカ類、エビ類などを食べる。尾叉長(びさちょう)は雄では1年で約13センチメートル、2年で17センチメートル、4年で24センチメートル、7年で31センチメートルほどに成長し、雌は雄より尾叉長が約2~4センチメートルほど長い。最大体長は雌では40センチメートルほどになる。多くは満3歳で成熟し、6~9月に大陸棚縁辺域で産卵する。卵は直径1.1~1.25ミリメートルの分離浮性。仔稚魚(しちぎょ)に関する知見はない。本種は漁業資源として重要な魚で、おもに底引網で漁獲され、高級な練り製品の原料にされる。
本種はマエソによく似ており、これまで両種は混同されていた。しかし本種は尾びれの上縁に並ぶ黒色の斑点が明瞭で数が多いこと、体の腹部が黒みを帯びること、側線鱗数と脊椎骨数が多いこと(マエソは46~49枚と45~48個)などでマエソと異なることが判明し、2006年(平成18)に魚類研究者の井上健彦(たけひこ)と中坊徹次(なかぼうてつじ)(1949― )が本種を新種S. umeyoshiiとして報告した。なお、1989年(平成1)に山岡耕作(やまおかこうさく)(1949― )らが行ったアイソザイム分析(アミノ酸配列による分析)でも別種である可能性が示唆されていた。種小名のumeyoshiiは2種の存在を指摘していた水産庁西海区(せいかいく)水産研究所(現、水産研究・教育機構水産資源研究所)の山田梅芳(うめよし)(1940― )に対する献名である。