「人為的な処理によって製造された非金属無機質固体材料」と日本セラミックス協会は定義している。その用途・製品は多様で、陶磁器、耐火物、ガラス、セメントのほか、コンデンサーなどの電子部品、碍子(がいし)、自動車排ガス浄化用触媒担体、光ファイバー、建築や自動車などに用いる構造材料、人工骨や歯などの医療用材料、センサーや照明用蛍光体、光触媒などに利用されている。「セラミックス」ということばは、陶器の粘土または陶器を意味するギリシア語のkeramos(ケラモス)に由来している。keramosは、さらに古いサンスクリット語の「燃やす」を意味する語と関連している。
「セラミックス」は、金属酸化物を高温での熱処理によって焼き固めた「焼結体」をさすことばである。しかし、金属酸化物を原料とする材料には、焼結ではなく溶かしてつくられる人工宝石やガラスのようなものや、化学反応や高い圧力を利用することで合成に高温を必要としないものもある。材料の面でも、窒化物や炭化物、ホウ化物などの酸素以外の非金属元素と金属の化合物の利用も進んできた。そのため、現在では、「セラミックス」は広義の定義として冒頭に掲げたように「人為的な処理によって製造された非金属無機質固体材料」(日本セラミックス協会)とされている。広義のセラミックスはさまざまな元素からなる多結晶の物質から非結晶(ガラス)のものまでを含むが、いずれもイオン結合や共有結合といった強い化学結合をもつために、優れた機械的強度、耐熱性、耐食性などの特徴がある。
セラミックスにはアルミナ(酸化アルミニウムAl2O3)、カルシア(酸化カルシウムCaO)、窒化ケイ素(Si3N4)などをはじめとする酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物などが含まれる。より広い意味では、ガラス、エナメル質、ガラスセラミックス(セラミックス結晶を含むガラス)、セメント系材料も含まれる。このように、セラミックスの発展に伴い、セラミックスの定義は拡大されてきている。
なお、「セラミックス」については各国が独自に定義しており、アメリカのセラミックス学会The American Ceramic Societyは、「天然または合成の無機、非金属、多結晶材料」と定義している。
セラミックスには硬く、またガラスなどを除いて融点の高いものが多いため、金属のように溶かしたり、削って形をつくることが困難である。そこで、粉状の原料を接着剤(バインダー)で固めて成形し「焼結」する方法が用いられる。物質には、表面エネルギーがあるため、つねに表面積を小さくしようとする力が働いている。粉どうしを固めただけでは多くの隙間ができるが、高温にすると原子が拡散しやすくなり、取り残された空気などが粉の表面を移動して外部に押し出され、すきまを小さくするように粉どうしが強固に結合する。陶磁器が窯(かま)で焼かれることで収縮し、一回り小さくなるのはそのためである。
セラミックスは、そこに含まれる非金属無機質固体材料の多様性ゆえ、さまざまな観点から分類されることがある。たとえば、陶磁器などの「オールド・セラミックス」と「ファイン・セラミックス」に分けられることがある。オールド・セラミックスは陶石、長石、粘土など、天然の鉱物を混合し、成形、焼成するといった方法でつくられる。ファイン・セラミックスは、JIS(ジス)(日本産業規格)により、「化学組成、結晶構造、微構造組織・粒界、形状、製造工程を精密に制御して製造され、新しい機能又は特性をもつ、主として非金属の無機物質」と定義されている。先端産業で活躍する電子部品、光学部品などの多くは、ファイン・セラミックスに含まれる。また、機械的、熱的性質等を利用する「構造用セラミックス」と、電磁気的、光学的、生化学特性等を利用する「機能性セラミックス」に分けられることもある。電磁気的機能としては、絶縁性、誘電性、圧電性、焦電性、磁性、半導性、イオン伝導性、電子放射性などがある。光学的機能としては、透光性、蛍光性、偏光性、光反射性、導光性などがある。さらに、電磁気的機能などを利用したセラミックスを電子セラミックスとよぶこともある。
セラミックスの製品例としては、住宅関連では、コンクリート、セメント、グラスウール、石膏(せっこう)ボード、トイレ・洗面台などの衛生陶器、IH(電磁)調理器天板の結晶化ガラス、セラミックス包丁などがある。また、医療分野では、ヒトの骨と同じ成分の水酸アパタイト(ハイドロキシアパタイト)が人工骨として、人工関節の骨頭にはジルコニアなどが利用されている。一方、多孔質のセラミックスは、水や食品、工業原料の分離・精製用濾過(ろか)材として、また水質改善用の吸着材や乾燥剤などにも利用されている。さらに携帯電話等の情報・通信機器には、積層コンデンサーなど、数多くのセラミックス電子部品が使われている。小型モーターにはフェライト磁石が、LED(発光ダイオード)照明には窒化ガリウム(GaN)などが使われている。充電可能なリチウムイオン電池の電極にも、リチウムイオンが出入りしやすいセラミックスが利用されている。自動車の排ガス浄化用触媒として、白金やパラジウムをコーディエライトなどの耐熱セラミックス表面に付着させた複合材料が利用されている。電柱や送電鉄塔などに、セラミックス製の絶縁碍子が、また太陽光発電の部品にもセラミックスが用いられている。