橋の構造形式の一つ。大きな曲げ剛性を有するアーチ状の部材(アーチリブrib)の両端を強固な地盤で支持して安定を保ち、鉛直材を介して交通のための床組み構造(桁(けた)など)を配置した橋梁(きょうりょう)形式である。桁(通行路)の位置により上路アーチ橋、中路アーチ橋、下路アーチ橋がある。床組み構造などの自重による等分布荷重の作用により生じる水平力と剪断(せんだん)力(部材にずれを生じさせる力)の合力である軸方向力を部材軸方向と一致させることで、アーチリブには軸方向の圧縮力のみが作用する。このときアーチリブの形状は放物線となり、支点からアーチ中央の頂点であるアーチクラウンまでの鉛直長をライズという。また、ライズと支間長(支点間の距離)の比をライズ比といい、5分の1から10分の1程度とすることが多い。
アーチの種類には、アーチリブを地盤に固定支持した固定アーチ、支点移動の影響を避けるために支点をヒンジhinge(蝶番(ちょうつがい))とした2ヒンジアーチや、アーチ中間部にもヒンジを挿入した3ヒンジアーチがある。また、支点どうしを引張部材(タイ)で結び、アーチリブに大きな水平力が加わらないようにした形式をタイドアーチとよぶ。これにより強固な基礎が不要となり、軟弱な地盤でも長大アーチ橋の架設が可能である。さらに、路面を構成する部材に剛性をもたせ、アーチ部材と荷重を分担する補剛(ほごう)アーチ橋がある。このような補剛アーチ橋には、アーチリブと補剛桁(ほごうげた)がともに曲げ剛性を有して鉛直荷重を分担するローゼLohse橋、補剛桁に大きな曲げ剛性を有してアーチリブと鉛直材の曲げ剛性を期待しないランガーLanger橋がある。
アーチ橋は桁橋(けたばし)と比較して、曲げが発生しにくく、たわみが小さい特徴を有し、圧縮力で支えるため組積造(そせきぞう)のような不連続な構造にでき、石、れんが、コンクリートなどの圧縮力だけに強い材料を使うことができる。このためアーチ橋の歴史は非常に古く、古代ローマ時代にはすでに使われており、一部は現在も使われ続けている。古くは石を用いてアーチ橋がつくられたが、現在ではより高強度のコンクリートや鋼材を用いたアーチ橋がつくられており、支間長も延びている。2025年時点で、世界最長のアーチ橋は中国広西(こうせい/カンシー)チワン族自治区にある天峨竜灘(てんがりゅうだん/ティエンオーロンタン)特大橋で、中央支間長600メートルのコンクリートアーチ橋である。