国際連合(国連)による国際社会の平和、安全の維持・回復のための活動。略称PKO。もともと国連憲章ではそのために集団安全保障制度を予定していたが、冷戦構造の出現によって機能不全となった。PKOは集団安全保障にかわり、停戦監視や兵力引き離しといった任務を通じ、紛争当事者による紛争の平和的解決を促す国連の活動として誕生したものである。安全保障理事会がPKOを設立し、事務総長が指揮をとり、加盟国が自発的に提供する部隊・要員が任務にあたる。1960年代までは、アラブ・イスラエル紛争や植民地独立に伴う武力紛争への対応として部隊が派遣されてきたが、冷戦末期になると、中南米諸国の民主化支援として、選挙や人権状況の監視、難民・避難民の帰還支援などが任務に加わり、軍事要員に加え、警察を含む文民要員の重要性も増した。
PKOは、紛争当事者の受け入れ同意に基づく非強制的な活動であり、不偏性や自衛以外での武力不行使を伝統的な基本原則としてきた。冷戦終結後のソマリアや旧ユーゴスラビアでの国内紛争では、PKO部隊による武力行使が容認された事例もあるが、いずれも奏功せず、改めてPKOの武力行使自制原則が確認された。ただし、休戦協定や和平合意に反発する武装勢力が、住民とりわけ女性や子どもといった社会的弱者やPKO部隊そのものを対象として武力攻撃を繰り返す場合には、それらを保護するために必要な武力行使が容認されることもあり、「強化されたPKO」とよばれる。なお、冷戦後のPKOの経験から、和平合意直後の治安維持のみならず、紛争当事国の政治的・社会的・経済的な復興支援(平和構築)の重要性や、平和維持と平和構築の連続性の確保が認識されるようになり、国連では両者を総称して「平和活動peace operation」とよんでいる。
2010年代に入って安全保障理事会の常任理事国(P5)間の協調関係が損なわれたことで、シリアなどへのPKOの適切な展開が困難となっている。
日本は、1992年(平成4)に成立・施行したPKO協力法(国際平和協力法ともいう。正式名称「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」平成4年法律第79号)を2001年(平成13)に改正し、後方支援業務に加え、地雷除去作業などへの参加も可能とし、派遣される自衛官の武器使用基準も緩和された。2025年(令和7)までに自衛隊は、アンゴラ、カンボジア、モザンビーク、エルサルバドル、ゴラン高原、東チモール、ネパール、スーダン、ハイチ、南スーダンのPKOに参加している。