労働者と使用者の間で、労働と報酬に関して約束すること。使用者(雇用主)は被用者(雇用者)を雇って労働に従事させ、被用者は労働の対価として使用者から報酬を受け取る。総務省「労働力調査」では、就業者が仕事をしていた事業所における地位(従業上の地位)によって、就業者を雇用者(役員を含む)、自営業主(個人経営の商店主、工場主、農業主など)、家族従業者(農家や個人商店などで、農作業や店の仕事などを手伝っている家族)に分けている。雇用者は、相対的にみて、第一次産業に少なく、第二次産業、第三次産業に多い。日本の雇用者率(雇用者、自営業主、家族従業者の合計に占める雇用者の割合)も、産業の高度化に伴い、1955年(昭和30)43.5%、1976年70.4%、1993年(平成5)80.7%、2023年(令和5)90.1%と変化している。この背景には、農林漁業従事者や商店主といった自営業主の減少や、サービス産業化に伴う女性パートタイム労働者(パート)の増加などがある。統計調査においては、就業実態を把握するために、上記の「従業上の地位」に加えて、雇用者を雇用契約期間別に区分するなどの措置がなされている。たとえば、1年を超えるまたは雇用期間を定めない契約で雇われている者を一般常雇(じょうやとい)といったり(総務省「労働力調査」)、非正規雇用などの把握では、雇用契約期間による区分(臨時雇など)、呼称・契約形態による区分(パート、アルバイト、派遣社員など)、労働時間による区分(短時間労働者など)がなされていたりしている。
雇用システムに関して、日本には、終身雇用、年功賃金、企業別組合という三つの特徴からなる「日本的雇用慣行」とよばれる雇用慣行がある。この慣行は、第一次世界大戦の終わりから第二次世界大戦の始まりまでの戦間期に職人が工場労働者として組織化され、戦時体制に入っていくなかで形成されて、1950年以降の高度成長期に広く労働市場に普及・定着した。長期雇用を前提として、企業内で人的資本投資(仕事を通じた教育訓練など)を行い、高い生産性を実現するもので、日本の高度成長の原動力となった。そのおもな担い手は、男性正社員であり、時間外労働や転勤・異動を前提とする働き方であった。一方、女性は、性別役割分業のもと、専業主婦として家庭を支え、職場では補助的業務につくケースが多かった。人事管理の面では、日本企業は、従業員の訓練可能性を重視し、柔軟な人材配置を可能にするメンバーシップ型雇用を特徴としている。ジョブ型雇用が職務に応じて人材を採用し活用するのに対して、メンバーシップ型雇用では、従業員がもつ職務遂行能力に応じて仕事が割り当てられる。
1990年代以降、日本の少子高齢化、経済の成熟・停滞、グローバル化や情報技術の高度化のなかで、日本企業の強みとされてきた日本的雇用慣行にほころびが生じている。年功賃金は賃金コストの増大を招き、終身雇用が成長分野への人材移動を妨げているとされる。そのため、男性正社員を中心とする職場の業務遂行体制から、女性や外国人といった多様な労働力の活用への転換などが求められている。こうしたなか、労働時間、勤務地、職種・職務を限定した多様な正社員制度(限定正社員制度)を取り入れる企業も出てきており、厚生労働省(令和5年度雇用均等基本調査・事業所調査)によると、2023年度においては、短時間正社員17.0%、勤務地限定正社員14.6%、職種・職務限定正社員12.1%となっている。