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定年制

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定年制
ていねんせい

労働者が一定の年齢(定年年齢)に達すると、その能力や意欲および労働の必要性にかかわらず、原則一律に雇用関係を解消することを定めた制度をいう。明治時代の後期に一部の大企業で定年制が導入されたころの定年年齢は50~55歳であったが、日本人の平均寿命が1955年(昭和30)に男性63.60歳、女性67.75歳、1995年(平成7)には男性76.38歳、女性82.85歳と延伸していくなかで、高年齢者の雇用の安定を目的とする高年齢者雇用安定法(正式名称「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」昭和46年法律第68号)に基づき、1998年4月から60歳定年制が施行された。その後、公的年金制度による年金支給開始年齢と連動させて、2013年(平成25)に事業者は65歳までの雇用確保措置が義務づけられ、2021年(令和3)には70歳までの雇用確保措置の努力義務が課されている。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」によれば、定年制を定めている企業の割合は94.4%である。一律定年制を定めている企業のうち、60歳を定年年齢としている企業の割合は72.3%、65歳が21.1%、66歳以上は3.5%である。再雇用制度(勤務延長制度との併用を含む)の導入率は83.7%と高い。「勤務延長制度」は、定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度であり、「再雇用制度」とは、定年年齢に達した者をいったん退職させた後、ふたたび雇用する制度をいう。

 定年制には、定年年齢まで働いた従業員の功労に対する謝意を表す面と、組織の活性化を促すために定年年齢を超えた従業員を強制的に辞めさせる面がある。なお、役職ごとに定年年齢を設けて、その年齢に達したら役職から自動的に退かせる役職定年制度をもつ企業もある。また、アメリカの労働経済学者ラジアーEdward P. Lazear(1948―2020)によれば、入社から定年までの間に労働者が生み出す総生産価値と労働者に支払われる総賃金の現在価値をバランスさせる方法として、定年制による強制的な退職には合理性があるという。

 定年制をめぐってはいくつかの論点がある。一つは、日本人の長寿命化が進んで、年齢にかかわりなく、能力や意欲に応じて活躍できるエイジレス社会(エイジフリー社会)の実現が求められるなかで、定年制がそれを妨げているおそれがある、とする。とくに定年退職後の再就職は、現役世代の転職に比べてむずかしいため、高齢者が能力を発揮できる職域の開発が望まれている。もう一つは、定年退職後の生活設計の困難である。定年退職後、多くの人が退職金や老齢基礎年金、現役時に蓄えた資産の取り崩しによって生計をたてる。しかし、それらが不十分であれば、生活が困難になり、定年退職後も就労を続けざるをえない。いいかえれば、定年制の存在は、引退時期の目安にはなるものの、個々の能力や意欲に応じて自ら就労・引退を決めるという自律的なキャリアの実現をむずかしくしているといえる。

[久米功一]2025年7月17日

©SHOGAKUKAN Inc.

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